シリーズ「育児休業と社会保険の手続き」では、妊娠の報告から職場復帰までを3つのライフステージに分けて、会社がする手続きと本人が受け取れる給付を整理しています。
前回の「産前産後休業編」に続き、今回は2つ目のステージである「育児休業」を取り上げます。
育児休業は、男性従業員にとっては最初のステージにもなるため、産後パパ育休を含めて整理します。
妊娠の報告から職場復帰までの流れ
育児休業の基本
育児休業と産後パパ育休
育児休業には、「育児休業」と、子の出生直後に取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」があります(育児・介護休業法5条・9条の2)。
| 育児休業 | 産後パパ育休 | |
|---|---|---|
| 取得できる期間 | 原則として子が1歳になるまで (女性は産後休業の終了後から) | 4週間(28日)まで (子の出生後8週間以内に) |
| 分割取得 | 2回まで | 2回まで |
| 申出の期限 | 原則として休業開始の1か月前まで | 原則として休業開始の2週間前まで |
| 休業中の就業 | 原則として不可 | 本人の同意の範囲で可 (労使協定が必要) |
産後パパ育休は主に男性の取得を想定した制度ですが、養子の場合などは女性も対象になります。
産後パパ育休と育児休業は別の制度なので、両方を組み合わせて取得することもできます。
1歳を超えて延長できる場合
保育所に入れないなどの事情がある場合は、1歳6か月まで、さらに2歳まで育児休業を延長できます。延長の可否は、本人から保育所の入所保留の通知などを確認したうえで判断します。
対象外にできる労働者
育児休業は、パート・アルバイトや有期雇用の従業員も対象です。
ただし、有期雇用の場合は、子が1歳6か月になるまでに労働契約が満了することが明らかでないことが要件になります。
また、労使協定を結んでいれば、入社1年未満の従業員、申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員、週の所定労働日数が2日以下の従業員などを対象から除外できます。
労使協定がなければ除外できない点に注意が必要です。
なお、日々雇い入れられる者は法律上、除かれています。
会社がする手続き①:社会保険料の免除
育児休業等の期間中は、会社が申し出ることで、健康保険・厚生年金保険の保険料が、本人負担分・会社負担分ともに免除されます(健康保険法159条、厚生年金保険法81条の2)。
産後パパ育休も対象です。
免除のルール
令和4年10月から、免除の要件は次のとおりになっています。
- 毎月の保険料:①その月の末日に育児休業等をしている場合、または②同じ月の中で14日以上の育児休業等をした場合に、その月の保険料が免除されます
- 賞与の保険料:賞与を支払った月の末日を含んで、連続して1か月を超える育児休業等をしている場合に免除されます
免除される期間は、産前産後休業と同じく、育児休業等を開始した日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までが基本です。
少しわかりにくい表現ですが、「産前産後休業から育児休業へ連続して休業する場合も途切れることなく免除」、「月末まで休業した月までが免除(復帰した月の保険料は免除されない)」と覚えるとよいでしょう。
短期間の育休は「月末」と「14日」に注意
特に注意したいのが、男性の産後パパ育休のように、休業期間が短い場合です。
| 休業期間の例 | 免除の有無 | 理由 |
|---|---|---|
| 5月27日〜6月5日(10日間) | 5月分が免除 | 5月末に休業している |
| 5月10日〜5月25日(16日間) | 5月分が免除 | 同じ月の中で14日以上休業している |
| 5月20日〜5月30日(11日間) | 免除なし | 月末に休業しておらず、14日にも満たない |
同じ「10日余りの休業」でも、月末をまたぐかどうか、14日以上かどうかで結果が変わります。
また、1か月以下の短期間の育休では、賞与の保険料は免除されません。
休業日程の相談を受けたときに、こうしたルールを知っておくと適切に説明できます。
申出の方法
「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)へ提出します。
産前産後休業に続けて育児休業を取得する場合は、改めて育児休業分の申出が必要です。
また、1歳6か月・2歳までの延長や、予定より早い終了などがあった場合も、その都度届出が必要です。
免除された月の保険料をいつの給与から控除しないかは、産前産後休業のときと同じく、翌月徴収か当月徴収かによって変わります(「社会保険料はなぜ9月に変わる?」参照)。
免除期間中も、将来の年金額の計算では保険料を納めた期間として扱われます。
会社がする手続き②:育児休業給付
育児休業中は、雇用保険から育児休業給付が支給されます。
現在、主な給付は次の3つです。
| 給付 | 対象となる休業 | 支給額の目安 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 育児休業 | 休業開始時の賃金の67% (休業開始から181日目以降は50%) |
| 出生時育児休業給付金 | 産後パパ育休 | 休業開始時の賃金の67% (28日が上限) |
| 出生後休業支援給付金 | 子の出生直後の育児休業等 (本人・配偶者ともに14日以上) | 休業開始時の賃金の13% (28日が上限) |
※支給額には上限があり、毎年8月に見直されます。
※健康保険から支給される出産手当金と計算式が異なるため、額は異なるケースが多いです。
受給の要件
育児休業給付金と出生時育児休業給付金は、原則として、休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12か月以上あることが要件です。
出生後休業支援給付金(令和7年4月創設)
父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内に、本人と配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業等を取得した場合に、最大28日分、休業開始時の賃金の13%が上乗せされます。
配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親の場合などは、本人の取得だけで対象になります。
育児休業給付金などの67%と合わせると80%となり、育児休業中は社会保険料が免除され、給付金には所得税もかからないことから、手取りでみると休業前のおおむね10割相当になるとされています。
会社がすること
育児休業給付の申請は、原則として会社を経由してハローワークに行います。
- 休業開始時の賃金を証明する「休業開始時賃金月額証明書」と、受給資格の確認に必要な書類を提出する
- 原則として2か月に1回、休業期間中の支給申請を行う(本人が希望する場合は1か月ごとも可)
- 出生後休業支援給付金は、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の申請とあわせて行う
休業中に賃金を支払った場合、その額が休業開始時の賃金の80%以上になると給付金は支給されず、80%未満でも額に応じて減額されることがあります。
休業中の手当などを支給する場合は、給付金への影響を確認しておきましょう。
延長するときの注意
保育所に入れないことを理由に1歳を超えて延長する場合、給付金の延長申請では、保育所の利用申込みを行ったことを示す申込書の写しなどの提出が必要です。
令和7年4月からは、「速やかな職場復帰のために保育所等の利用を申し込んでいるか」が確認されるようになっています。
本人に、入所保留の通知だけでなく申込書の控えも保管しておくよう、あらかじめ伝えておくと安心です。
助成金を活用できる場合も
育児休業の取得や、休業中の業務の代替に取り組む中小企業には、両立支援等助成金が用意されています。
- 男性の産後パパ育休の取得を後押しする「出生時両立支援コース」
- 面談・プラン作成を通じて育休の取得と職場復帰を支援する「育児休業等支援コース」
- 休業中の業務を代替する体制づくりを支援する「育休中等業務代替支援コース」
いずれも、休業の取得前から計画的に準備する必要があるものが多いため、対象となる従業員が出たら早めに確認しておくことをおすすめします。
まとめ
育児休業のステージで会社がすることは、主に次の3つです。
- 育児休業・産後パパ育休の申出を受け、休業期間を確定する(労使協定の有無も確認)
- 「育児休業等取得者申出書」を提出し、社会保険料の免除を受ける(延長・終了時も届出)
- 育児休業給付の手続きを会社経由で行い、原則2か月ごとに支給申請する
特に短期間の育休では、月末をまたぐか、14日以上かによって保険料免除の有無が変わります。
給付金も含め、休業日程の組み方で本人の受け取る額が変わることがあるため、休業前の説明が大切です。
次回の「職場復帰後編」では、復帰後の標準報酬月額の改定や、時短勤務中の給付などを取り上げます。
育児休業の手続きは、休業期間が長い分、保険料免除の届出や2か月ごとの給付申請など、継続的な対応が必要です。
手続きの代行や、休業日程の相談にも対応していますので、お気軽にご相談ください。
ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
本記事は執筆時点(令和8年度)の法令・公表資料に基づく情報です。制度の詳細・運用は今後の法改正や通達等により変更される可能性があります。個別の該当性については、事案によって判断が分かれることがありますので、最新情報は厚生労働省・日本年金機構・ハローワーク等の公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




