「従業員から育休を取りたいと相談されたが、業務の引き継ぎや復帰後の受け入れをどう進めればよいか分からない」
そう感じたことがある経営者・人事担当者の方は多いのではないでしょうか。
育児休業の取得と、その後の円滑な職場復帰は、労働者本人にとってはもちろん、人材の定着を図りたい企業にとっても重要なテーマです。
そうした育休の取得・復帰支援の取り組みを金銭面から後押ししてくれる制度が、両立支援等助成金の「育児休業等支援コース」です。
本コラムでは、令和8年度時点の情報として、この制度の仕組みを整理してご紹介します。
※両立支援等助成金には全6コースがあります。各コースの比較は両立支援等助成金の全コース一覧をご覧ください。
育児休業等支援コースとは
このコースは、働き続けながら子の養育を行う労働者の雇用の継続を図るため、育児休業の円滑な取得、職場復帰に資する取り組みを行った中小企業事業主を支援する制度です。
支給メニューは次の3つで構成されています。
- 育休取得時:育休復帰支援プランに基づいて育児休業を取得させた場合
- 職場復帰時:プランに基づいて育児休業から復帰させた場合(6か月以上継続雇用が必要)
- 育児休業等に関する情報公表加算:①または②に上乗せする加算
なお、育休中の代替要員確保に関する支援は、現在は「育休中等業務代替支援コース」という別のコースで扱われています。本コースの支給要領には代替要員確保の加算は含まれていないため、混同しないよう注意が必要です。
対象事業主の要件
【まず確認】今の状態で自己診断できるもの
- 中小企業事業主であること
┗「中小企業」の具体的な資本金・従業員数の基準は助成金でよく出てくる「中小企業事業主」とは?を確認ください。
【事前準備】産前休業取得前に整えておくもの
- 育児休業制度、および育児のための短時間勤務制度を、対象労働者の育休開始前に労働協約または就業規則に規定していること
┗育児・介護休業規程を就業規則と別で定めていれば、当該規程のみ提出で可(推奨) - 育休復帰支援プランに基づく支援体制を構築し、面談シートを作成していること
①育休取得時の支給要件
- 雇用保険被保険者であること
- 育休復帰支援プランに基づく支援方針を、対象労働者の育休開始前までに周知していること
- 育休開始前までに対象労働者と面談し、「育休復帰支援面談シート」に記録していること
- プランに基づいて業務の引き継ぎを実施していること
- 対象労働者に連続3か月以上の育児休業(産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合は、産後休業を含め連続3か月以上)を取得させたこと
②職場復帰時の支給要件
- プランに基づき、育休中の対象労働者に職務・業務に関する情報を提供していること
- 育休終了前に対象労働者と面談していること
- 原則として対象労働者を原職等に復帰させていること
- 育休終了後6か月以上継続して雇用し、支給申請時も雇用保険被保険者であること
- 育休終了後6か月間の就業割合が5割未満の場合は、支給対象とならないこと
③育児休業等に関する情報公表加算の支給要件
「両立支援のひろば」の公表サイトに一般事業主行動計画を策定・届出・公表していること
公表内容は以下の通りです。
- 男性労働者の育児休業等取得割合
- 女性労働者の育児休業取得割合
- 育児休業の平均取得日数(男女別)
支給額
| メニュー | 支給額 | 対象人数の上限 |
|---|---|---|
| ①育休取得時 | 30万円 | 1事業主あたり有期1人・無期1人(計2人) |
| ②職場復帰時 | 30万円 | 1事業主あたり有期1人・無期1人(計2人) |
| ③情報公表加算 | 2万円 | 1事業主1回限り(①②いずれかに加算) |
1人の育休取得者について、①育休取得時(30万円)から②職場復帰時(30万円)まで一貫して支援を受け、③情報公表加算(2万円、初回のみ)を受けた場合、合計で最大62万円となります。
③は事業主単位で1回限りの加算であり、対象人数を増やしても比例して増えるものではありません。
申請の流れ
- 産前休業取得前①:対象従業員と会社側が面談、要件確認
- 産前休業取得前②:就業規則(育児・介護休業規程)の整備・届出
- 産前休業取得前③:面談シート、育休復帰支援プランの作成
- 産前休業取得前④:一般事業主行動計画の作成、「両立支援のひろば」への登録
- 産前休業取得前⑤:(雇用環境均等部へ)一般事業主行動計画の届出
- 育児休業取得中①:出産、育児休業申出書の取得、出勤簿、賃金台帳の整備
- 助成金申請①:出産日の翌日から3か月経過後、2か月以内
- 育児休業取得中②:従業員への業務連絡メール、資料の保存
- 育児休業取得中③:育児休業終了2か月前面談の実施
- 職場復帰:原則として原職復帰(変更があれば面談シートへ記載)終了後面談の実施
- 助成金申請②:職場復帰日の翌日から6か月経過後、2か月以内
他の助成金と比較し、一つの取組は難しくありませんが、スケジュール管理が肝要です。特に面談や従業員への連絡の日時は修正ができないため、記録するための段取りの心構えが必要です。
よくある質問
Q. 有期雇用労働者と無期雇用労働者、両方の育休取得者がいる場合はどうなりますか?
①②とも、1事業主当たり有期雇用労働者1人・無期雇用労働者1人の計2人まで支給対象となります。3人目以降の取得者については、このメニューでの追加支給の対象にはなりません。
※有期雇用労働者の判定はプラン策定日時点(労働条件通知書で判定)で実施します。
Q. 育休復帰支援プランは、いつまでに作成すればよいですか?
育休取得時・職場復帰時いずれのメニューも、対象労働者の育休開始前までにプランに基づく支援方針を周知していることが要件とされています。育休の相談を受けた段階で、早めにプランの整備に着手することをおすすめします。
Q. 対象労働者を原職等に復帰とはどういったことですか?
例えば、月給制から時給制への変更、正社員から非正規社員への変更、正社員時に私有されていた手当ての不支給など、労働条件が実質的に不利になっていれば不支給になります。
一方、勤務時間が8時間/日→6時間/日になり(3/4に減少)、結果として賃金が20万円/月→15万円/月は支給される可能性は高いです。
Q. 育休中の代替要員を確保した場合の加算はありますか?
本コースの支給要領には含まれていません。代替要員確保に関する支援は「育休中等業務代替支援コース」という別のコースで扱われているため、該当する場合はそちらをご確認ください。
まとめ:育休取得から復帰までの「一貫した支援」がカギ
育児休業等支援コースは、育休取得時・職場復帰時のそれぞれの段階で、育休復帰支援プランに基づいた丁寧な対応を行うことが支給の前提になっています。単に育休を取得させるだけでなく、面談の実施や業務引き継ぎの記録など、プロセスを踏んでいるかどうかが問われる点が特徴です。
なお、両立支援等助成金には、このほかに「出生時両立支援コース」をはじめ、「育休中等業務代替支援コース」「介護離職防止支援コース」「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」「柔軟な働き方選択制度等支援コース」もあり、自社の状況によってはそちらの活用が適している場合もあります。
「育休復帰支援プランの作り方が分からない」「うちの会社で対象になる従業員がいるか確認したい」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。助成金の要件・支給額等は、年度改定に限らず随時見直されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




