育児休業と社会保険の手続き【産前産後休業編】産休の基本と、保険料免除・出産手当金

育児休業と社会保険の手続き【産前産後休業編】産休の基本と、保険料免除・出産手当金 労務トラブル・実務対応

「従業員から妊娠の報告を受けたけれど、会社として何をすればいいのか分からない」。
中小企業では、出産や育児休業の手続きが数年に一度しか発生しないことも多く、そのたびに調べ直しているというお声をよく聞きます。

このシリーズ「育児休業と社会保険の手続き」では、妊娠の報告から職場復帰までを3つのライフステージに分けて、会社がする手続きと、本人が受け取れる給付を整理します。
今回は、最初のステージである「産前産後休業」を取り上げます。

妊娠の報告から職場復帰までの流れ

まず、全体の流れを確認しておきましょう。

ステージ期間の目安会社の主な対応解説記事
妊娠の報告―(育児休業制度などの)
個別の周知・意向確認
本記事
産前産後休業産前6週〜産後8週・社会保険料の免除
・出産手当金の証明
本記事
育児休業産後休業の終了後
 〜原則として子が1歳まで
・社会保険料の免除
・育児休業給付の手続き
育児休業中編
職場復帰復帰後・標準報酬月額の改定
・時短勤務中の給付など
職場復帰後編

なお、男性従業員の場合は産前産後休業がなく、配偶者の出産をきっかけに、育児休業(産後パパ育休を含む)のステージから始まります。
ただし、次に説明する「妊娠の報告を受けたとき」の対応は、男性従業員から配偶者の妊娠・出産の申出があった場合にも必要です。

妊娠の報告を受けたら:個別の周知・意向確認

本人または配偶者の妊娠・出産の申出を受けたとき、会社には、育児休業制度などを個別に知らせ、取得の意向を確認することが義務付けられています(育児・介護休業法21条)。
個別に知らせる内容は、次の4つです。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  2. 育児休業・産後パパ育休の申出先
  3. 育児休業給付・出生後休業支援給付に関すること
  4. 休業期間中の社会保険料の取扱い

面談や書面の交付などの方法で行い、取得を控えさせるような形で行うことは認められません。
また、令和7年10月からは、この申出のタイミングで、勤務時間帯や勤務地など仕事と育児の両立に関する本人の意向を聴き取り、それに配慮することも求められています。

「社会保険料の取扱い」が周知事項に含まれている点からも分かるとおり、手続きの知識は、休業に入る前の説明の段階から必要になります。

産前産後休業の基本

休業できる期間

産前産後休業は、労働基準法65条に定められた休業で、雇用形態を問わず、すべての女性労働者が対象です。

  • 産前休業:出産予定日以前6週間(双子以上の場合は14週間)。本人が請求した場合に、就業させてはならない期間です。本人が請求しなければ、働き続けることもできます。
  • 産後休業:出産日の翌日から8週間。本人の請求の有無にかかわらず、原則として就業させることはできません。ただし、産後6週間を過ぎた後は、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就かせることはできます。

出産日当日は産前休業に含まれるとされています。
また、出産が予定日より遅れた場合、その遅れた日数も産前休業として扱われ、産後休業の8週間は実際の出産日の翌日から数えます。

妊娠中・休業中に会社が守ること

  • 妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換させる必要があります(労働基準法65条3項)
  • 妊婦健診などのための時間の確保や、医師の指導に基づく勤務時間の変更などの措置も求められます(男女雇用機会均等法12条・13条)
  • 産前産後休業の期間とその後30日間は、原則として解雇することができません(労働基準法19条)

なお、産前産後休業中の賃金を支払うかどうかは法律で決まっておらず、就業規則などの定めによります。
無給とする会社が多く、その場合の所得補償として、健康保険から出産手当金が支給されます。

会社がする手続き①:社会保険料の免除

産前産後休業期間中は、会社が申し出ることで、健康保険・厚生年金保険の保険料が、本人負担分・会社負担分ともに免除されます(健康保険法159条の3、厚生年金保険法81条の2の2)。

申出の時期と方法

「産前産後休業取得者申出書」を、産前産後休業の期間中、または休業終了日から1か月以内に、日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)へ提出します。
協会けんぽに加入している事業所では、この1枚で健康保険と厚生年金保険の両方の免除が受けられます。

出産予定日を基準に申し出た後、実際の出産日がずれた場合や、予定より早く休業を終えた場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出します。
出産日の連絡を本人からもらえるよう、休業前に取り決めておくとスムーズです。

免除される期間

免除されるのは、産前産後休業を開始した日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までです。

たとえば、4月10日から7月5日まで産前産後休業を取得した場合、終了日の翌日(7月6日)が属する7月の前月、つまり6月分までが免除となり、4月分〜6月分の3か月分が免除されます。

この「〇月分」は、保険料計算上の対象月です。実際に給与からの控除を止めるのは、翌月徴収の会社であれば5月〜7月支給の給与、当月徴収の会社であれば4月〜6月支給の給与となります。
この考え方は、「社会保険料はなぜ9月に変わる?」でも詳しく取り上げています。

免除期間中も被保険者の資格は変わらず、将来の年金額を計算する際には、保険料を納めた期間として扱われます。
本人にとって不利益がないことも、休業前の説明で伝えておくと安心してもらえます。

会社がする手続き②:出産手当金の証明

出産手当金とは

出産のために会社を休み、その間の給与が支払われない場合に、健康保険から支給される給付です(健康保険法102条)。

  • 支給される期間:出産日(出産が予定日より遅れた場合は予定日)以前42日(双子以上の場合は98日)から、出産日の翌日以後56日目までのうち、会社を休んだ期間。出産が予定日より遅れた場合は、遅れた期間も対象になります。
  • 1日あたりの金額:支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均した額の30分の1に、3分の2をかけた額

休業中に給与を一部支払った場合でも、その日額が出産手当金の日額より少なければ、差額が支給されます。

会社がすること

出産手当金の申請書は本人(または会社経由)が健康保険に提出しますが、申請書には会社が記入する「事業主の証明欄」があり、休んだ期間の出勤状況と賃金の支払状況を証明します。

産前分と産後分に分けるなど、複数回に分けて申請することもできますが、事業主の証明はその都度必要です。
賃金台帳や出勤簿と照らし合わせて記入するため、休業期間中の勤怠や給与の記録を正しく残しておくことが大切です。

本人の手続きが中心のもの:出産育児一時金

出産にかかる費用の補助として、健康保険から、子ども1人につき原則50万円の出産育児一時金が支給されます。

多くの場合、医療機関が本人に代わって健康保険に請求する「直接支払制度」が利用されるため、会社が手続きに関わる場面はほとんどありません。
なお、男性従業員の配偶者(健康保険の被扶養者)が出産した場合も、同様に「家族出産育児一時金」が支給されます。

そのほかの注意点

  • 雇用保険料:給与の支払いがない期間は、雇用保険料も発生しません。
  • 住民税:休業中は給与から天引きできないため、休業前にまとめて徴収する、本人が直接納める方法に切り替えるなど、本人と相談して取り扱いを決めておく必要があります。
  • 健康保険組合の場合:手続き先や様式、独自の上乗せ給付(付加給付)などが異なる場合があるため、加入している健康保険組合の案内も確認してください。

まとめ

産前産後休業のステージで会社がすることは、主に次の3つです。

  1. 妊娠の報告を受けたら、育児休業制度などを個別に知らせ、意向を確認する
  2. 「産前産後休業取得者申出書」を提出し、社会保険料の免除を受ける(出産日がずれたら変更届)
  3. 出産手当金の申請書に、事業主として証明する

特に社会保険料の免除は、何月分から何月分までが対象で、それが何月の給与に反映されるのかを押さえておかないと、控除の止め忘れや止めすぎにつながります。

次回の「育児休業中編」では、産後休業に続く育児休業の基本と、育児休業中の社会保険料の免除、育児休業給付の手続きを取り上げます。

出産・育児休業の手続きは、発生の頻度が少ない分、手順を忘れてしまいがちです。
「今回だけ手伝ってほしい」というご相談も承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

本記事は執筆時点(令和8年度)の法令・公表資料に基づく情報です。制度の詳細・運用は今後の法改正や通達等により変更される可能性があります。個別の該当性については、事案によって判断が分かれることがありますので、最新情報は厚生労働省・日本年金機構・協会けんぽ等の公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。