「男性社員にも育休を取ってほしいが、人手が回らなくなるのが不安」
「制度は整えたいが、何から手をつければいいか分からない」
そんなお悩みをお持ちの中小企業の経営者の方は多いのではないでしょうか。
男性の育児休業取得は、法改正や社会的な要請もあり、多くの企業にとって避けて通れないテーマになっています。そうした取り組みを金銭面から後押ししてくれる制度が、両立支援等助成金の「出生時両立支援コース」です。
このコースには、個々の労働者の育休取得を対象とする「第1種」と、事業所全体の育休取得率の向上を対象とする「第2種」の2種類があり、対象・要件・支給額がそれぞれ異なります。
本コラムでは、令和8年度時点の情報として、この2種類の違いと支給額を整理してご紹介します。
※両立支援等助成金には全6コースがあります。各コースの比較は両立支援等助成金の全コース一覧をご覧ください。
出生時両立支援コースとは
出生時両立支援コースは、男性労働者の育児休業取得を促進する事業主を支援する、両立支援等助成金のコースの一つです。
- 第1種:個々の男性労働者に育児休業を取得させた事業主への助成(中小企業事業主が対象)
- 第2種:事業所全体で男性労働者の育休取得率を向上させた事業主への助成(特定事業主が対象)
「特定の社員に育休を取ってもらった」実績に対して助成されるのが第1種、「会社全体の取得率が上がった」実績に対して助成されるのが第2種、とイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
対象事業主の要件
中小企業事業主の範囲(第1種に適用)
第1種の対象となる「中小企業事業主」は、雇用関係助成金に共通する基準(業種ごとの資本金・常時雇用労働者数の基準)で判定されます。
詳細は、助成金でよく出てくる「中小企業事業主」とは?で確認できます。
特定事業主の範囲(第2種に適用)
| 資本金の額または 出資の総額 | 常時使用する 労働者の数 | ||
|---|---|---|---|
| 小売業(飲食業含む) | 5,000万円以下 | または | 300人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 300人以下 | |
| 卸売業 | 1億円以下 | 300人以下 | |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
次の要件も満たす必要があります(第1種、第2種共通)
【事前準備】育休開始前に整えておくもの
- 育児・介護休業法に基づく制度を就業規則等に規定している
- 一般事業主行動計画を策定・届出・公表している(プラチナくるみん認定事業主を除く)
【申請前】支給申請時までに確定するもの
- 育休開始日から支給申請日まで、対象労働者を雇用保険被保険者として継続雇用
支給額
第1種:支給要件と支給額
第1種は、中小企業事業主のみが対象です。主な要件は次のとおりです。
なお、ここでの「中小企業」の具体的な資本金・従業員数の基準は助成金でよく出てくる「中小企業事業主」とは?を確認ください。
- 複数の雇用環境整備の措置を実施している。措置は以下の5項目。
①雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
②育児休業に関する相談体制の整備
③雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供
④雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知
⑤育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置 - 業務代替者の業務見直しに係る規定を策定し、運用体制を整備している
- 子の出生後8週間以内に開始する、連続5日以上の育児休業を取得する
| 対象人数 | 支給額 | 備考 |
|---|---|---|
| 1人目 | 20万円 | 雇用環境整備の措置を4つ以上実施した場合は30万円 |
| 2人目 | 10万円 | |
| 3人目 | 10万円 |
助成金の対象人数が2人目以降は必要な雇用環境整備の措置の数が増える点、措置を手厚く行うほど1人目の支給額が上がる仕組みになっている点がポイントです。「どうせなら」ということで措置を積み増し、30万円の適用を狙う事業者様も少なくありません。
※同一事業主について、3人目までが支給対象です。
第2種:支給要件と支給額
第2種は、「特定事業主」(対象要件は後述)が対象で、次のいずれかを満たす必要があります。
※同一事業主について、1回限りの支給
- 男性労働者の育休取得率が、前年度比30ポイント以上上昇し、かつ50%以上を達成
- 直前2事業年度で、男性労働者の育休取得率70%以上を維持
| 区分 | 支給額 |
|---|---|
| 基本額 | 60万円 |
| プラチナくるみん認定事業主 | 15万円加算 |
第1種が「個々の取得実績」を評価するのに対し、第2種は「会社全体の取得率」を評価する制度である点が大きな違いです。個別の労働者に着目するか、組織全体の底上げに着目するかによって、活用すべきコースが変わってきます。
情報公表加算
第1種・第2種いずれの申請にも付加できる加算措置として、「情報公表加算」があります。
| 区分 | 支給額 |
|---|---|
| 情報公表加算 | 2万円 |
「両立支援のひろば」の公表サイトで、男性・女性それぞれの育児休業取得割合や平均取得日数等を公表することで、2万円が加算されます(1社1回限り)。
なお、令和8年度の改正により、育児休業取得割合の計算式に「育児目的休暇の利用実績」を追加することが可能になりました。
申請から支給までの流れ
申請期限は、第1種と第2種で異なります。
- 第1種:育児休業終了日の翌日から2か月以内に申請
- 第2種:対象事業年度の翌年度開始から6か月以内に申請
- 情報公表加算:第1種または第2種の申請と同時に申請
- 事前準備:育児・介護休業規程、行動計画の整備
- 環境整備:研修、相談体制の整備、周知など
- 体制整備:業務引継ぎ、人員配置
- 休暇取得:男性従業員の育休取得
- 情報公表:結果をとりまとめ、両立支援のひろばへ掲載
- 助成金申請:労働局・ハローワークによる審査・支給決定
令和8年度からの変更点
令和8年4月8日付の改正により、次のような変更が行われています。
- 出生時育児休業の申出期限(原則2週間前まで)を超過している事業主については、雇用環境整備の実施数要件が1つ加算
- 第2種の取得率算出において、同一の子について第1種の対象となった労働者分は算出から除外される
- 情報公表加算の対象情報に「育児目的休暇の利用実績」が追加可能になった
改正のたびに要件が細かく調整されているため、過去に申請したことがある事業者の方も、最新の支給要領を都度ご確認いただくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 第1種と第2種は、同じ年度に両方申請できますか?
それぞれ対象となる実績が異なるため、要件を満たせば両方の申請が可能です。
Q. 第1種と第2種はどちらがよいか?
第2種の取得率向上は育休取得期間は出産後1年以内、取得日数1日でも助成対象となります。事務負担も比較的少なく、助成額も高い制度となっています(第1種は出産後8週間以内、取得日数は連続5日以上)。
Q. プラチナくるみん認定がない場合、第2種は申請できませんか?
基本額の60万円部分は認定の有無を問わず申請可能です。15万円の加算部分のみプラチナくるみん認定事業主が対象となります。
まとめ:自社の状況に合わせたコース選びが鍵です
出生時両立支援コースは、第1種(個々の育休取得)と第2種(取得率の向上)で、対象となる実績も支給額も大きく異なります。「特定の社員に育休を取らせたい」のか「会社全体の取得率を底上げしたい」のか、まずは自社の状況を整理したうえでコースを選ぶことが重要です。
「うちの会社はどちらのコースが向いているか」「雇用環境整備の措置は何をどこまでやればよいか」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。助成金の要件・支給額等は、年度改定に限らず随時見直されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




