「不妊治療のために通院したいが、休みが取りづらそうで言い出せない」「更年期の不調を抱えながら働く女性社員に、どう配慮すればよいか分からない」
そうした声に応えるための休暇制度・両立支援制度の整備を後押しするのが、両立支援等助成金の「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」です。
このコースは、①不妊治療、②月経に起因する症状、③更年期における心身の不調、の3つの区分で構成されており、区分ごとに要件を満たせばそれぞれ30万円が支給されます。
本コラムでは、令和8年度時点の情報として、対象となる制度の種類・支給要件・支給額を整理してご紹介します。
※両立支援等助成金には全6コースがあります。各コースの比較は両立支援等助成金の全コース一覧をご覧ください。
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは
不妊治療と仕事との両立、または月経に起因する症状(PMSを含む)や更年期における心身の不調への対応(以下「女性の健康課題対応」)と仕事との両立に資する職場環境を整備し、休暇制度等を導入・利用させた中小企業事業主を支援する制度です。
- 不妊治療:不妊治療と仕事との両立のための制度を導入・利用させた場合
- 女性の健康課題対応(月経):月経に起因する症状への対応のための制度を導入・利用させた場合
- 女性の健康課題対応(更年期):更年期における心身の不調への対応のための制度を導入・利用させた場合
3区分はそれぞれ別個に支給要件・支給額が定められており、1つの区分のみの申請も、複数区分を組み合わせた申請も可能です。
対象となる両立支援制度
各区分に共通して、対象となる制度は次の6種類です。
労働協約または就業規則等に、対象労働者(不妊治療・月経症状・更年期不調への対応を行う労働者)が利用できることが規定されている必要があります。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 休暇制度 | 通院等のために利用できる休暇制度 ※当該目的を含む多目的休暇・目的を限定しない休暇を含む ※年次有給休暇は対象外 |
| 所定外労働制限制度 | 残業を免除する制度 |
| 時差出勤制度 | 所定労働時間を変えずに始業・終業時刻を繰り上げ・繰り下げる制度 |
| 短時間勤務制度 | 1日の所定労働時間を1時間以上短縮する制度 |
| フレックスタイム制 | 定めた総労働時間の範囲内で始業・終業時刻を労働者が決められる制度 |
| 在宅勤務等 | 自宅等での勤務を可能にする制度 |
休暇制度における月経の区分について、労働基準法第68条に基づく生理休暇(無給でよいとされる措置義務)自体は対象外ですが、これと同等の給与を支給する「有給の生理休暇」は対象に含まれます。
短時間勤務制度を対象とする場合は、次の2点も満たす必要があります。
- 制度利用期間中の時間当たり基本給等の水準が、利用前を下回っていないこと
- 短時間勤務の利用にあたり、正規雇用労働者が本人希望も含めて他の雇用形態に変更されていないこと
対象事業主の要件
【事前準備】制度利用開始前に整えておくもの
- 中小企業事業主であること
※詳細は助成金でよく出てくる「中小企業事業主」とは?で確認できます - 対象となる両立支援制度(上記6種類のいずれか)を、就業規則等に規定していること
※制度利用に係る手続・賃金の取扱いも含む
※常時10人未満の労働者を雇用し就業規則の作成・届出を行っていない事業場は、制度内容を明文化し全労働者に周知が必要 - 両立支援担当者を選任していること(対象労働者の制度利用開始日の前日まで)
- 上記の規定整備は、対象労働者による制度利用開始日の前日までに完了していること
【申請前】支給申請時までに確認すること
- 対象労働者が、上記の規定の範囲内で制度を利用していること
- 対象労働者が、所定労働日において合計5日(回)以上、対象制度を利用していること
※時間単位の利用も可能だが、5日間に分けて利用する必要がある
※利用期間は利用開始日から1年以内であること - 対象労働者が、制度利用開始日から支給申請日まで雇用保険被保険者として継続雇用されていること
両立支援担当者とは
両立支援担当者は、対象となる課題(不妊治療・月経症状・更年期不調)と仕事との両立支援業務を担当し、労働者からの相談に応じる者です。
事業主自身、または雇用する労働者の中から選任するほか、社会保険労務士や産業医等の外部専門家(助産師・産婦人科医・保健師・看護師等)を選任することも可能です。
区分(不妊治療/月経/更年期)ごとに、それぞれ制度利用開始日の前日までに選任している必要があります。
対象労働者の要件
- 両立支援制度自体は、雇用保険被保険者以外(雇用保険料の対象とならない短時間パートタイム労働者等)も利用できる制度としておく必要があります
- ただし、助成金の支給対象としてカウントされるのは、制度を利用した労働者のうち雇用保険被保険者である者に限られます
- 不妊治療は男女を問わず対象です。女性のみを対象とした制度では支給対象になりません
- 更年期の区分も、女性を主眼としつつ、就業規則等で制度化していれば男性労働者の利用も対象になります
支給額
区分ごとに要件を満たすと、それぞれ30万円が支給されます。
| 区分 | 支給額 | 支給回数 |
|---|---|---|
| 不妊治療 | 30万円 | 1事業主あたり1回限り |
| 女性の健康課題対応(月経) | 30万円 | 1事業主あたり1回限り |
| 女性の健康課題対応(更年期) | 30万円 | 1事業主あたり1回限り |
同一年度内(4月1日〜翌年3月31日)であれば、対象労働者が同一人物であっても、複数区分の要件をそれぞれ満たせば重ねて受給できます。たとえば同じ従業員が不妊治療と更年期の両方の対応で制度を利用した場合、それぞれの区分で30万円ずつ、合計60万円の受給が可能です。
なお、過去に旧制度「不妊治療両立支援コース」で受給したことがある事業主は、不妊治療区分について再度受給することはできません(月経・更年期の区分は、新たに要件を満たせば対象になります)。
申請の流れ
区分ごとに、対象労働者の制度利用が合計5日(回)を経過した日の翌日から2か月以内に、本社等所在地を管轄する労働局長に提出します。
- 事前準備:制度の規定整備・両立支援担当者の選任
- 制度利用:対象労働者が対象制度を合計5日(回)以上利用
- 助成金申請:利用実績が5日を経過した日の翌日から2か月以内に区分ごとに申請
- 労働局による審査・支給決定
よくある質問
Q. 不妊治療は男性が行う場合もありますが、休暇等の支援制度を利用した場合も対象になりますか?
このコースは男女を問わず不妊治療を対象としているため、会社の規程に基づき男性労働者が制度を利用した場合も申請対象となります。反対に、女性労働者のみを対象とした制度では支給対象になりません。
Q. 不妊治療・月経・更年期、3つの制度すべてを整備する必要がありますか?
すべてを網羅する必要はありません。いずれかの制度を労働協約または就業規則に規定し、対象労働者に利用させれば要件を満たします。また、3区分それぞれに別々の休暇制度等を設ける必要もなく、いずれかが対象として含まれていれば構いません。
Q. 休暇制度を無給としても対象になりますか?
不妊治療と更年期の区分は、無給の休暇でも支給対象になります。一方、月経の区分は、労働基準法第68条の規定(無給でよいとされる措置義務)に沿った対応をしただけでは対象にならず、これと同等の給与を支給する「有給の生理休暇」である必要があります。
まとめ:3区分の要件を整理して、無理なく導入を
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは、①不妊治療、②月経、③更年期の3区分で構成され、それぞれ30万円が支給される制度です。全区分を一度に整備する必要はなく、自社の従業員構成や実態に合わせて、まずは1つの制度から着手することも可能です。
「就業規則にどう規定すればよいか分からない」「両立支援担当者を誰にすればよいか迷っている」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。助成金の要件・支給額等は、年度改定に限らず随時見直されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




