健保組合も協会けんぽも黒字に|支えているのは「賃上げ」と「働き手の増加」

健保組合も協会けんぽも黒字に|支えているのは「賃上げ」と「働き手の増加」 行政発表・統計

健保組合の決算は黒字、協会けんぽも黒字の見込み

令和8年(2026年)9月29日、健康保険組合連合会(健保連)が、令和7年度(2025年度)の健保組合の決算見込みを公表しました。
全国1,372の健保組合を合わせた経常収支は、2,417億円の黒字となる見込みです。

中小企業の多くが加入する協会けんぽ(全国健康保険協会)も、7月に公表した令和7年度の決算見込みで、6,795億円の黒字としています。

高齢化で医療費が増え続けるといわれる中、なぜ黒字になっているのでしょうか。
この記事では、2つの決算から黒字を支えているものを読み解き、会社が負担する社会保険料にどう関係するのかを整理します。

令和8年度も半年が過ぎますが、いずれも「見込み」の数値です。
協会けんぽは、協会の会計と国の特別会計を合算した見込みで、国の決算の状況によって数値が変わる可能性があるとしています。

健保組合の決算見込み(令和7年度)

健保組合は、主に大企業や同業種の企業が集まって設立する健康保険の運営団体です。
健保連の公表によると、令和7年度の決算見込みは次のとおりです。

項目内容
経常収支2,417億円の黒字(前年度から2,270億円増)
平均保険料率9.34%(前年度から+0.03ポイント)
保険料収入前年度から4,241億円増(+4.6%)
 うち賃上げの影響+2,803億円
 うち被保険者数の増加+961億円
保険給付費+3.4%
後期高齢者支援金+3.2%
赤字の組合511組合(全体の37.2%)

全体では黒字ですが、4割近い組合は赤字です。
平均保険料率も少しずつ上がっており、保険料率を引き上げて収支を合わせている組合もあると考えられます。

協会けんぽの決算見込み(令和7年度)

協会けんぽの令和7年度の決算見込みは、次のとおりです。

項目内容
単年度収支差6,795億円の黒字(前年度から209億円増)
平均保険料率10.0%(前年度から据置き)
保険料収入前年度から4,057億円増(+3.8%)
 賃金(平均標準報酬月額)の増加+0.6万円/人(+1.8%)
 被保険者数の増加+45.9万人(+1.8%)
保険給付費+3.9%
拠出金等(後期高齢者支援金他)+4.5%
準備金残高6兆5,457億円(保険給付費等の7.2か月分)

協会けんぽは、保険料収入が増えた主な要因を、被保険者数と賃金の増加としています。

黒字を支えているのは「賃上げ」と「働き手の増加」

2つの決算に共通しているのは、支出も増えているものの、それ以上に保険料収入が伸びたことです。
その要因は、大きく2つあります。

1. 賃上げ

賃上げの実感はともかく、統計の上では賃金は上がっています。
健保組合の保険料収入の増加のうち、3分の2近く(2,803億円)が賃上げの影響です。

健康保険料は、「標準報酬月額×保険料率」で計算します。
保険料率が変わらなくても、賃金が上がれば保険料は増えます。厚生年金保険料も同じ仕組みです。
収入が増えれば、その分、保険料の負担も増えることになります。

2. 働き手の増加

被保険者が増えているということは、社会保険に加入して働く人が増えているということです。

  1. 高齢者の就業:2025年の65歳以上の就業者数は943万人と、22年連続で増加し、過去最多となりました(総務省統計局)。就業者のおよそ7人に1人が65歳以上です。
  2. 女性の就業:2025年の女性の就業者数は3,126万人で、前年から44万人増えています(総務省「労働力調査」)。
  3. 社会保険の適用拡大:パート・アルバイトなど、短時間で働く人への社会保険の適用が段階的に広がっています。

高齢者の就業については日本の高齢化のいま・これからと高年齢者雇用安定法とは、女性の活躍については女性活躍推進法とは、適用拡大については106万円の壁撤廃で解説しています。

「2025年問題」はどうなったのか

団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年には、医療・介護費の増大、介護人材の不足、社会保障給付費の急増が懸念されていました。
いわゆる「2025年問題」です。

令和7年度の決算を見る限り、保険財政の面では、賃上げと加入者の増加による収入の伸びが支出の伸びを上回り、懸念されていたほどの悪化は見られません。

ただし、健保組合や協会けんぽが拠出する後期高齢者支援金は増え続けており、健保組合の4割近くは赤字です。
協会けんぽも、支援金は今後も高い水準が続くと見込んでいます。
介護人材の不足など、保険財政以外の課題も残っています。

令和8年度の社会保険料率(京都府)

健康保険料率は下がったが、合計の負担はわずかに増加

協会けんぽの令和8年度の平均保険料率は、10.0%から9.9%に引き下げられました。
京都府の健康保険料率は、10.03%から9.89%になっています。

一方、令和8年4月分から、子ども・子育て支援金(0.23%)の徴収が始まりました。
介護保険料率も1.59%から1.62%に上がっています。

令和7年度令和8年度
健康保険料率(京都府)10.03%9.89%
子ども・子育て支援金率―0.23%
合計(40歳未満・65歳以上)10.03%10.12%
介護保険料率(40〜64歳)1.59%1.62%
合計(40〜64歳)11.62%11.74%

健康保険料率だけを見ると下がっていますが、子ども・子育て支援金を含めた合計では、わずかに負担が増えています。
子ども・子育て支援金の控除の時期については、社会保険料はなぜ9月に変わる?で解説しています。

ほかの社会保険料率

保険令和7年度令和8年度負担
厚生年金保険18.3%18.3%労使折半
雇用保険
(一般の事業)
1.45%
(うち、事業主0.9%)
1.35%
(うち、事業主0.85%)
事業主の負担が大きい
労災保険業種ごとの料率変更なし全額事業主

厚生年金保険料率は、平成29年(2017年)9月から18.3%で固定されています(厚生年金保険法第81条)。
今後は、料率ではなく、報酬の増減が保険料額を左右します。

雇用保険料率は、令和8年度に0.1%引き下げられました。
労災保険率は原則3年ごとに改定されており、原則どおりであれば、次回は令和9年度(2027年度)の改定が見込まれます。

来年度(令和9年度)の保険料率はどうなる?

黒字が続いているとはいえ、来年度の保険料率については、支出を押し上げる要因もあります。

  1. 診療報酬の改定:令和8年度の診療報酬改定では、本体部分が令和8年度に+2.41%、令和9年度に+3.77%と、2年度平均で+3.09%の引上げとされます。医療費の単価が上がることで、保険給付費が増える要因になります。
  2. 国庫補助の減額:令和8年5月に成立した健康保険法等の改正により、協会けんぽへの国庫補助は、令和8年度から3年間、特例として追加で減額されます(報道によると、毎年500億円)。
  3. 後期高齢者支援金の増加:高齢化に伴い、支援金は今後も増えると見込まれています。

一方で、賃上げと加入者の増加が続くかどうか、協会けんぽの6.5兆円の準備金をどう活用するかによっても、保険料率は変わってきます。

協会けんぽの保険料率は、例年、年末から翌年2月ごろにかけて議論され、3月分から変わります。
現時点で来年度の見通しは示されていないため、今後の公表を確認する必要があります。

事業主が押さえておきたいこと

  1. 料率の変更時期を確認する 協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から変わります。翌月の給与から控除している場合は、4月支給分の給与から反映させます。給与計算の流れは給与計算の流れで解説しています。
  2. 事業主負担は「報酬」と「料率」の両方で増える 社会保険料は「報酬×料率」で決まり、原則として労使折半です。賃上げで報酬が上がっても、料率が上がっても、事業主の負担は増えます。令和8年度は健康保険料率が下がりましたが、子ども・子育て支援金も労使折半で加わりました。賃上げで固定的賃金が変わったときは、随時改定(月額変更届)で保険料も変わります。賃上げを検討するときは、会社負担分の社会保険料(健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)も含めて人件費を試算することが大切です。
  3. 加入対象の拡大に備える 社会保険の適用拡大が進む中、パート・アルバイトの方の加入要件を確認しておきましょう。

まとめ

健保組合も協会けんぽも、令和7年度は黒字の見込みとなりました。
その黒字を支えているのは、賃上げと働き手の増加です。

一方で、医療費の増加や国庫補助の減額など、来年度に向けて支出を押し上げる要因もあります。
保険料率だけでなく、子ども・子育て支援金を含めた合計の負担と、報酬の増加による負担の変化をあわせて見ておくことが大切です。

給与計算の代行については、「給与計算」のページで、対応内容と料金の目安をご紹介しています。

ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

本記事は執筆時点(令和8年10月)の公表資料に基づく情報です。決算見込みの数値は、確定値とは異なる場合があります。保険料率等は今後の改定により変更される可能性があります。