令和8年度の女性活躍推進法改正で、「女性活躍の推進は、女性の健康上の特性に留意して行われるべき」という考え方が、法律の基本原則として明確化されました。
あわせて、女性の健康支援に取り組む企業を評価する新しい認定制度「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」も創設されています。
本コラムでは、この改正の背景と、企業に求められる具体的な取り組みを整理してご紹介します。えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の基本的な仕組みについては、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは?もあわせてご覧ください。
なぜ「女性の健康上の特性への配慮」が明記されたのか
女性の働き方をめぐる近年の変化
日本の女性の就業率は、この数年で大きく変化してきました。
かつて30〜40代で大きく落ち込んでいた、いわゆる「M字カーブ」は、台形に近づきつつあります。
第1子出産後も約7割の女性が就業を継続するようになりました。
一方で、25〜29歳でピークを迎えた後、正規雇用比率は減少しており、出産・育児期に仕事と両立できず離職を余儀なくされる層が一定程度存在します。
また再就職の際には、短時間・パートタイム就労へ移行するケースが多い状況です。
そして、女性の健康上の課題によって昇進を断念するケースもあるとされています。
男女間賃金差異や女性管理職比率が、長期的には改善しているものの、国際的に見ると依然として低い水準にとどまっている背景には、こうした要因があると考えられています。
数字で見る「健康課題で困った経験」
経済産業省が実施した調査(「働く女性の健康推進に関する実態調査報告書」)では、勤務先で女性特有の健康課題や症状で困った経験の有無について、「困った経験がある」と回答した人の割合が51.5%にのぼりました。
実に半数以上の女性が、月経随伴症状、妊娠・出産、更年期の不調などにより、働く上で何らかの困難を経験している実態が明らかになっています。
法改正の考え方
こうした状況を踏まえ、厚生労働省はこの改正の趣旨について、
「女性はライフステージに応じた健康上の特性が就労に影響し、就業継続やキャリア形成の妨げとなる可能性がある。そのため健康上の特性への配慮を基本原則として明確にした」
と説明しています。
つまり、採用や昇進の機会をいくら制度上増やしても、健康上の課題が理由でキャリアを諦めざるを得ない状況が残っていては、女性の能力発揮にはつながらない、という問題意識に基づく改正だといえます。
事業主行動計画における位置づけ
一般事業主行動計画の策定にあたっては、男女の性差を踏まえ、特に職場における女性の健康上の特性に係る取組が行われることが望ましいとされています。
なお、性別を問わず使いやすい特別休暇制度の整備など、女性だけでなく労働者全体を対象とした取り組みも有効とされています。
えるぼしプラス・プラチナえるぼしプラスとは
令和8年4月から、既存のえるぼし認定・プラチナえるぼし認定に、女性の健康支援に関する基準を追加した「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」という新しい認定が始まりました。
えるぼしプラスは、えるぼし認定と同じく1〜3段階に区分されます。
認定基準
この認定を受けるには、女性活躍推進に関する既存の基準(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の基準)に加えて、女性の健康支援に関する以下の4つの基準をすべて満たす必要があります。
基準の内容は、えるぼしプラス(1〜3段階)・プラチナえるぼしプラスのいずれも共通です。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| ①制度の整備 | 以下の2つの制度を設けていること ・「女性の健康上の特性に配慮した休暇制度」 ※多目的休暇・目的を限定しない休暇を含み、年次有給休暇を除く ・「女性の健康上の特性への配慮のために利用できる制度」 ※半日・時間単位の有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、在宅勤務のいずれか) |
| ②方針の周知 | 女性の健康上の特性への配慮に関する方針を示し、①の制度内容とあわせて労働者に周知させる措置を講じていること |
| ③理解促進の取組 | 女性の健康上の特性への配慮に関する研修その他、労働者の理解を促進するための取組を実施していること |
| ④相談体制の整備 | 女性の健康上の特性への配慮に関する業務を担当する者を選任し、労働者からの相談に応じさせる措置を講じるとともに、当該担当者を労働者に周知させる措置を講じていること |
なお、この制度は女性活躍推進に関する既存の基準を置き換えるものではなく、上乗せする形です。
えるぼしプラス・プラチナえるぼしプラスの認定を受けるには、女性の健康支援に関する上記4基準だけでなく、通常のえるぼし認定・プラチナえるぼし認定の基準も満たす必要があります。
具体的な取組例
厚生労働省では女性の健康上の特性に係る取組の例として、以下を紹介しています。
- 職場におけるヘルスリテラシー向上のための取組
・女性の健康上の特性に関する研修会の開催
・婦人科検診等の検診受診の重要性を含めた、健康課題に関する啓発冊子の配布や動画の配信等 - 休暇制度の充実・柔軟な働き方の実現
・生理休暇を取得しやすい環境の整備
・不調時の休養、治療・通院、検診等の多様な目的で利用することができる休暇制度等
・所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワーク等 - 健康課題を相談しやすい体制づくり
・産業医、カウンセラーの配置や外部の相談先の紹介、オンラインによる健康相談
・女性が気軽に利用・相談できるオンラインによる相互交流の場の設置 - その他の取組
・婦人科検診の受診に対する支援
・妊婦等が利用できる休憩スペースの設置
厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」には、企業の取組事例も掲載されているので、制度設計の参考になります。
方針を定める際のポイント
えるぼしプラス・プラチナえるぼしプラスの申請にあたっては、女性の健康上の特性への配慮に関する方針を定める必要があります。
厚生労働省は、以下の内容を盛り込むことが有効と紹介しています。
- 女性の健康支援の取組を行う背景(自社の状況把握・課題分析に基づく、数値を含む実情)
- 女性の健康支援が経営上重要な課題であることについて、経営トップ層等による決意表明
- 女性の健康支援の目的が、個々の労働者の能力発揮にあることを管理者層に理解させるメッセージ
- 制度利用や相談における労働者のプライバシー保護、ハラスメント防止の重要性の呼びかけ
健康に関する情報は特にプライバシー保護が求められる点に留意が必要です。
助成金の活用も選択肢に
女性の健康上の特性への配慮に関する休暇制度等を整備し、実際に利用させた場合には、両立支援等助成金の不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースの活用も選択肢になります。
不妊治療、月経に起因する症状、更年期における心身の不調という3つの区分で、それぞれ30万円が支給される制度です。
今回ご紹介した「女性の健康上の特性への配慮」の考え方と、対象となる休暇制度等の内容が重なる部分も多いため、あわせてご検討いただくとよいと思います。
まとめ:制度整備と行動計画への位置づけを
令和8年度の改正により、女性の健康上の特性への配慮は、女性活躍推進法の基本原則として明確化されました。
えるぼしプラス・プラチナえるぼしプラスという新しい認定制度も始まっており、休暇制度や相談体制の整備を通じて、女性がキャリアを諦めることなく能力を発揮できる職場づくりが、これまで以上に求められています。
「自社の休暇制度が基準を満たせるか確認したい」「行動計画に女性の健康支援をどう位置づければよいか相談したい」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。

本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。法令の内容は随時見直されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




