「加入状況にかかる調査票」が届いたら|加入義務の範囲と令和11年10月の改正

「加入状況にかかる調査票」が届いたら|加入義務の範囲と令和11年10月の改正 法改正・法律解説

年金事務所から「厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査票」という書類が届いて、驚かれた事業主の方もいらっしゃいませんか。

結論を先にお伝えすると、次の3点です。

  1. 加入が必要な事業所に当たらない場合は、その理由を説明し、必要な書類を送れば足りる場合があります。
  2. 加入が必要な場合は、速やかに届出が必要です。放置すると、来所通知書、立入検査、職権による遡及した加入手続きに進むこともあります。
  3. 令和11年(2029年)10月に、個人事業所の非適用業種が解消されます。 今は対象外の個人事業所も、将来は対象になる可能性があります。

この記事では、先日お手伝いした事例も交えながら、社会保険の加入が必要な事業所の範囲を整理します。(事例は個人が特定されないよう一部加工しています)

「加入状況にかかる調査票」とは

日本年金機構では、将来の無年金・低年金の防止や、事業主の負担の公平性を確保するため、未適用事業所の把握と加入指導に取り組んでいます(日本年金機構「厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組み」)。
調査票は、こうした取組みの中で、加入状況を確認するために届くものと考えられます。

年金事務所で伺ったところ、調査票を受けて加入する事業主の方が一定数いらっしゃるため、送付を続けているとのことでした(統計は取っていないとのことです)。

また、加入していない理由はさまざまですが、加入の要件を十分に理解できていない方もいらっしゃるそうです。

社会保険の加入義務があるのはどんな事業所か

厚生年金保険・健康保険は、事業所単位で加入します。加入が義務づけられる事業所(強制適用事業所)の範囲は、次のとおりです。

区分取扱い主な根拠
法人の事業所業種を問わず、事業主のみ(1人)でも強制適用厚生年金保険法第6条、健康保険法第3条第3項
個人事業所常時5人以上の従業員を使用し、法定17業種に当たる場合に強制適用同上
上記以外従業員の半数以上の同意と、厚生労働大臣の認可により任意適用厚生年金保険法第6条第3項など

法人は1人でも加入が必要

法人の事業所は、従業員を常時使用している場合、事業主のみ(1人法人)でも加入が必要です(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。

個人事業所は「5人以上」かつ「適用業種」

個人事業所は、従業員が常時5人以上で、かつ法定17業種に当たる場合に加入が必要です。
非適用業種の例としては、農林水産業や、サービス業の一部(飲食店、旅館、理容店など)があります。

なお、令和4年(2022年)10月からは、法律・会計に関する業務を行う士業(弁護士、税理士、社会保険労務士など)の個人事業所が、適用業種に加わりました。

任意適用という選択肢

強制適用に当たらない事業所でも、従業員の半数以上の同意と、事業主の申請による厚生労働大臣の認可を受ければ、加入できます。

法人でも加入が不要となる場合がある

「法人は1人でも加入が必要」とお伝えしましたが、実際に加入の対象となる人がいない場合は、加入が不要となることがあります。

厚生年金保険・健康保険の被保険者となるのは、適用事業所に使用され、労務の対償として給与や賃金(報酬)を受ける人です(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。
そのため、法人であっても、報酬を受ける役員や従業員がいない場合は、被保険者となる人がいないことになります。
例えば、新規設立した法人で役員報酬を払っていない場合が想定されます。

令和11年10月に非適用業種が解消されます

現在、個人事業所は「5人以上」かつ「法定17業種」の両方に当たる場合に、強制適用となります。
農林水産業や飲食サービス業などは、5人以上でも対象外でした。

令和7年(2025年)に成立した年金制度改正法により、令和11年10月から、この業種の要件がなくなります。
常時5人以上の従業員を使用する個人事業所は、業種を問わず、強制適用の対象となる予定です。

ただし、経過措置があります。日本年金機構の資料では、令和11年10月より前に開設した、法定17業種以外の個人事業所は、任意適用の区分で整理されています。
また、従業員が5人未満の個人事業所は、これまでどおり強制適用の対象外です。

「5人以上」の基準を、法人にも当てはめていませんか

加入要件の誤解で、よくあるのが「5人以上」の基準です。

「5人以上」は、あくまで個人事業所の基準です。
法人は、従業員が1人でも加入が必要です。この2つが混ざってしまい、法人なのに「5人未満だから入らなくてよい」と考えてしまう、というケースがあると伺いました。

この場合の「従業員」には役員も含めるため、報酬を受けている社長1人の場合も加入が必要です。
なお、他の事業所で加入している場合でも、報酬を受けていれば加入が必要です。
その際は、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出が必要です。

年金事務所でも、顧問の専門家から「入らなくてよい」と言われていた、という事業主の方がいらっしゃるそうです。

こうしたとき、大切なのは「その専門家の業務範囲に、社会保険が含まれているか」という点です。
例えば、会社を設立するとき、税理士は税務、司法書士は登記の専門家です。
社会保険の手続きは、それぞれの専門分野ではない場合があります。
そもそも、相談していない事項については、案内がないことも自然です。

社会保険の加入要件に不安がある場合は、顧問の方の業務範囲を確認したうえで、社会保険労務士にご相談ください。

加入が不要な場合の対応|説明(疎明)の進め方

調査票が届いても、実際に加入が不要な場合は、その理由を説明すれば足ります。
ポイントは、加入が不要な理由を、客観的な資料で示すことです。
説明に使える資料の例として、次の2つが調査票に記載されています。

  1. 源泉所得税の領収書の写し
  2. 決算書の写し

事例|役員の退任で、現在は加入の対象者がいない場合

先日お手伝いした事例は、次のようなものでした。

  • 設立当初は、役員報酬を支払っていたため、加入が必要な状態でした。
  • その後、その役員が退任し、現在は、役員報酬を受ける役員も従業員もいない状態でした。
  • 経過が少し複雑だったため、電話や郵送ではなく、年金事務所に出向いて口頭で説明しました。
  • 前述の資料に加え、給与支払明細や登記の写しなど、状況が分かる資料を追加で提出しました。

電話や郵送でも対応できますが、経緯が複雑な場合は、来所して説明するほうが伝わりやすいことがあります。
やり取りの日時や担当者は、控えておくと安心です。

放置するとどうなるか|来所通知書と立入検査

調査票を放置すると、次の段階に進むことがあります。

  1. 調査票が届く(複数届く場合や役員の自宅に届くケースも)
  2. 対応しないと、「来所通知書」が届く
  3. 来所通知書にも対応しないと、立入検査が行われる
  4. 立入検査を踏まえ、職権により雇用の事実に基づき遡及した加入手続きを行う

先日の事例では、「来所通知書」が届いた段階で、ご相談をいただきました。
この通知書には、3.立入検査、4.遡及した加入手続きについての記載がありました。

立入検査は、厚生年金保険法第100条、健康保険法第198条に基づくものです。
事業主には受忍義務があり、正当な理由なく検査を拒んだ場合などは、罰則の対象となります。

遡及して加入することになった場合の影響

加入が必要な事業所だった場合、遡って加入することになります。
遡及の期間は、保険料の徴収権が時効にかかる最大2年です(厚生年金保険法第92条、健康保険法第193条)。

その影響は、事業主の金銭負担だけではありません。

  • 従業員の方は、遡って国民年金と国民健康保険を脱退することになります。
  • 国民年金や国民健康保険料は、遡って還付される仕組みがありますが、支払った従業員に還付がなされます。折半負担となっている厚生年金や健康保険について、制度上は事業主に支払い義務があります。従業員負担分の取扱いは、事業主と従業員の話し合いになることがあり、やり取りは複雑になります。
  • 決算や、従業員の方の確定申告にも影響が及ぶ可能性があります。

税務の取扱いについては、税理士にご確認ください。

まとめ

  1. 法人は、従業員が1人でも加入が必要です。「5人以上」は個人事業所の基準です。
  2. ただし、報酬を受ける役員や従業員がいないなど、加入の対象となる人がいない場合は、加入が不要となることがあります。
  3. 加入が不要な場合は、その理由を客観的な資料で説明すれば、問題ありません。
  4. 放置すると、来所通知書、立入検査へと進むことがあります。
  5. 令和11年10月に、個人事業所の非適用業種が解消されます。事業所の業種や従業員数を、今のうちに確認しておきましょう。

労務のご相談は、「労務相談」のページで、対応内容と料金の目安をご紹介しています。
調査票が届いた、加入の要否が分からない、といったご不安は、お気軽にご相談ください。

本記事は執筆時点(令和8年10月)の公表資料に基づく情報です。制度の詳細は今後の法改正等により変更される可能性があります。