「従業員が100人を超えたら、女性活躍推進法への対応が必要と聞いたが、何をすればよいか分からない」
そうした事業主の方に向けて、女性活躍推進法の基本的な仕組みをご紹介します。
この法律は、女性が職業生活において十分に能力を発揮できる社会を実現するため、事業主に対して行動計画の策定や情報公表を求めるものです。
本コラムでは、対象となる事業主の範囲、一般事業主行動計画の策定・届出・公表の流れ、状況把握で確認すべきポイントを整理してご紹介します。
女性活躍推進法とは
正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、平成28年4月に全面施行された法律です。
国、地方公共団体、民間事業主(一般事業主)それぞれの女性活躍推進に関する責務を定めており、令和8年度の改正により、法の有効期限が令和18年(2036年)3月31日まで10年間延長されました。
この法律では、事業主に対して次の取り組みを求めています。
- 自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
- 状況把握・課題分析を踏まえた一般事業主行動計画の策定・社内周知・届出など
- 女性の活躍に関する情報の公表
なお、令和8年度の改正では、女性活躍の推進にあたって「女性の健康上の特性」に配慮して行われるべき旨が、法の基本原則として明確化されました。
この点については、別のコラムで詳しくご紹介します。
また一般事業主行動計画には、「次世代育成支援対策推進法」に基づく行動計画もあります。同じ名前ですが別のものとなりますのでご注意ください。
対象となる事業主
常時雇用する労働者数によって、義務の内容が異なります。
| 常時雇用する労働者数 | 取扱い |
|---|---|
| 101人以上 | 義務 |
| 100人以下 | 努力義務 |
義務の対象は当初「301人以上」の事業主でしたが、令和4年4月1日の改正で「101人以上」に拡大されています。
労働者数のカウントには注意が必要で、パートや契約社員であっても、1年以上継続して雇用されている(または雇入れ時から1年以上継続して雇用されると見込まれる)場合は、常時雇用する労働者に含まれます。
100人以下の事業主も努力義務の対象となるため、規模にかかわらず取り組みを検討する意義があります。
女性活躍推進のポイント
女性活躍を進めるための、分析ポイントは大きく5つの視点を持つことです。
5つの視点から、自社の現状や課題分析を踏まえ、足りないものから重点的に取り組むことです。
取組の効果が出るまでに時間がかかるものがあります。まずは始めることが大事です。
- 意識改革
・女性自身が「昇進がキャリアの選択肢」とならず、昇進意欲が低い場合が多い
・管理職がアンコンシャスバイアスや性別役割分担意識などにより男女で異なる扱いをしている - 女性のキャリアアップ
・教育訓練、評価・昇進、出張命令や残業命令、仕事の割振りに男女差がある - 働き方改革
・長時間労働は女性の継続就業、キャリアアップを阻む
・柔軟な働き方は育児・介護に伴う離職防止や生産性向上の効果が望める - 両立支援
・法に定める両立支援の制度を定めるだけでなく、制度利用しやすい環境整備も必要
・自社の実態に合わせた法を上回る支援制度の導入はより効果的 - 人事制度
・採用や配置について、女性が少ない職場ではより多く採用・配置する
一般事業主行動計画とは
一般事業主行動計画とは、自社の女性の活躍に関する状況を把握し、課題を分析したうえで、その課題の解決に向けて策定する計画のことです。策定から届出までは、大きく4つのステップで進みます。
ステップ1:状況把握・課題分析
まず、自社の女性の活躍に関する状況を、5つの基礎項目に沿って把握します。
- 採用した労働者における女性労働者の割合
- 男女の平均継続勤務年数の差異
- 平均残業時間数等の労働時間の状況
- 管理職に占める女性労働者の割合
- 男女間賃金差異
数値を踏まえ、自社の課題を分析・深堀します。
なお厚生労働省の一般事業主行動計画策定支援ツールでは、次のような状態を「課題がある」として示されました。
- 採用者に占める女性割合が30%を下回る区分がある
- 男女の平均継続勤務年数の差異において、女性が70%未満である
- 各月ごとの平均残業時間等の労働時間が45時間を超えている
- 管理職に占める女性労働者の割合が30%未満の区分がある
ステップ2:行動計画の策定
状況把握・課題分析の結果を踏まえ、行動計画を策定します。
行動計画には、以下の事項を必ず記載する必要があります。
- 計画期間:2~5年を目安に計画期間内に数値目標を達成できるように設定する。定期的に進捗確認しながら改定していく。
- 数値目標:達成しようとする目標を、定量的に設定
- 取組内容:数値目標を実現するための具体的な取組内容を決定
- 取組の実施時期:計画期間内で、各取組内容を実施する時期を具体的に設定
ステップ3:社内周知・公表・届出
策定した行動計画は、事業所内の見やすい場所への掲示、書面での配布、電子メール、イントラネットなどにより、非正社員を含めたすべての労働者に周知します。
厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載や、自社の公式サイトへの掲載により、外部への公表も行います。
行動計画を策定した旨を、電子申請、郵送または持参により、事業所を管轄する都道府県労働局に届け出ます。
女性の活躍に関する情報公表
行動計画の策定・届出とは別に、女性の職業選択に資するよう、女性の活躍に関する情報を年1回以上公表することも義務付けられています。
労働者数100人以下は努力義務ですが、101人以上は300人以下は必須2項目+選択1項目以上、301人以上は必須2項目+選択2項目(各区分毎に1項目)以上が必須となっています。
公表項目の具体的な内容は、令和8年度の改正で拡大されており、女性活躍推進法の情報公表義務が拡大|男女間賃金差異・女性管理職比率とはで詳しく紹介しています。
よくある質問
Q. 策定しない場合はどうなるか?
女性活躍推進法自体に、行動計画を策定しなかった場合の罰則規定はありません。
ただし、厚生労働大臣(都道府県労働局長)は、事業主に対して報告を求めたり、助言・指導・勧告を行ったりすることができる仕組みになっています。
特に、情報公表に関する勧告に従わなかった場合は、企業名が公表される可能性があります。
「罰則がないから対応しなくてよい」というものではなく、対応状況によっては公表のリスクがある点にご留意ください。
Q.策定のインセンティブは?
行動計画の策定・届出や情報公表など、一定の基準を満たした事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)を受けることができます。
認定を受けると、認定マークを商品や広告等に付すことができ、企業イメージの向上や人材確保にもつながります。
えるぼし認定の具体的な基準や、さらに上位の「プラチナえるぼし認定」については、別のコラムで詳しくご紹介します。
まとめ:まずは自社が対象かどうかの確認から
女性活躍推進法は、常時101人以上の労働者を雇用する事業主に、行動計画の策定・届出・情報公表を義務付ける法律です。100人以下の事業主も努力義務の対象となるため、規模にかかわらず自社の状況を一度確認しておくことをおすすめします。
「自社が義務の対象になるか確認したい」「行動計画の策定方法が分からない」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。

本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。
法令の内容は随時見直されることがあります。
最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




