「非正規社員の待遇を、正社員と同じ賃金テーブルで管理したい」
そうした処遇改善に取り組む事業主を支援するのが、キャリアアップ助成金の「賃金規定等共通化コース」です。
有期雇用労働者等に、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に、1事業所あたり60万円が支給されます。
本コラムでは、令和8年度時点の情報として、支給額・対象労働者・対象事業主の要件を整理してご紹介します。
※キャリアアップ助成金には全6コースがあります。各コースの比較はキャリアアップ助成金の全コース一覧をご覧ください。
賃金規定等共通化コースとは
就業規則または労働協約の定めるところにより、雇用するすべての有期雇用労働者等に、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成する制度です。
「共通化」とは、有期雇用労働者等と正規雇用労働者について、それぞれ3区分以上の賃金区分(等級など)を設けたうえで、両者に共通する区分を2区分以上設定し、有期雇用労働者等を、その共通区分に格付けされた正規雇用労働者と同等以上の待遇にすることをいいます。
単に賃金テーブルの見た目を揃えるだけでなく、実際の格付けと待遇を一致させることが求められます。
対象事業主の要件
【まず確認】今の状態で自己診断できるもの
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 正規雇用労働者に係る賃金規定等を、新たに作成する有期雇用労働者等の賃金規定等と同時またはそれ以前に導入していること
- 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができること
【事前準備】取組の実施前に整えるもの
- 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いていること
- 対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出していること(賃金規定等を共通化する前日まで)
- 就業規則または労働協約の定めるところにより、雇用する有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに設け、賃金規定等の区分に対応した基本給等の賃金の待遇を定めていること
- 賃金規定等の区分を、有期雇用労働者等と正規雇用労働者についてそれぞれ3区分以上設け、うち共通する区分を2区分以上設ける設計を行っていること
- 当該賃金規定等が適用されるための合理的な条件を、就業規則または労働協約に明示していること
【取組の実施】
- 有期雇用労働者等1人以上と、他に雇用する正規雇用労働者1人以上を、それぞれ共通化した区分に格付けし、当該有期雇用労働者等を、格付けされた正規雇用労働者と同等またはそれ以上の区分に格付けして適用したこと
- 上記の区分における、有期雇用労働者等の基本給など職務の内容に密接に関連して支払われる賃金の時間当たりの額を、正規雇用労働者に適用される同等の区分における時間当たりの額と同額以上としたこと
- 当該賃金規定等を、すべての有期雇用労働者等と正規雇用労働者に適用させたこと
【申請前】取組後、申請までに確認すること
- 当該賃金規定等を6か月以上運用していること
- 当該賃金規定等の適用を受けるすべての有期雇用労働者等と正規雇用労働者について、適用前と比べて基本給および定額で支給されている諸手当を減額していないこと
- キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んでいること(支給申請時点で、このコースに定めるすべての支給要件を満たしていること)
対象労働者の要件
- 賃金規定等を共通化した日の前日から起算して3か月以上前の日から、共通化後6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であること
- 共通化した区分に格付けられている正規雇用労働者以上の区分に格付けされていること
- 賃金規定等を共通化した日以降の6か月間、当該事業所において雇用保険被保険者であること
- 賃金規定等を新たに作成し、適用した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族でないこと
- 支給申請日において離職していないこと
支給額
| 企業規模 | 支給額 |
|---|---|
| 中小企業 | 60万円 |
| 大企業 | 45万円 |
1事業所あたり1回のみの支給です。
「中小企業」の具体的な資本金・従業員数の基準は助成金でよく出てくる「中小企業事業主」とは?をご確認ください。
申請の流れ・申請期限
- 【事前準備】キャリアアップ計画の作成・提出(賃金規定等共通化の実施日の前日まで)
- 【取組の実施】賃金規定等の区分を共通化し、対象労働者に適用
- 【申請】共通化後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請
申請先は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局です。
よくある質問
Q. 正社員と非正規社員の賃金テーブルを完全に一本化する必要がありますか?
完全な一本化までは求められていません。有期雇用労働者等と正規雇用労働者それぞれに3区分以上の賃金区分を設け、そのうち共通する区分を2区分以上設定すれば要件を満たします。
共通区分以外の部分(たとえば正社員のみの上位等級)を残すことは可能です。
Q. 「共通の区分」とは、具体的にどう判定されますか?
有期雇用労働者等の基本給など職務内容に密接に関連する賃金の時間当たり額が、正規雇用労働者の同等区分の時間当たり額と同額以上であることが必要です。
単に等級の名称を揃えただけでは足りず、実際の待遇水準が伴っている必要があります。
Q. 賃金規定等共通化コースと賃金規定等改定コースは同時に申請できますか?
それぞれ異なる支給要件に基づくコースのため、要件を満たせば別々に申請することは可能です。ただし、同一の賃金改定について両方の要件を満たすよう設計する場合は、要件の重複や矛盾がないか事前にご確認ください。
まとめ:賃金テーブルの共通化で処遇改善を進める
賃金規定等共通化コースは、非正規社員と正社員の賃金規定等を共通化することで、1事業所あたり60万円(大企業は45万円)が支給される制度です。
賃金テーブルの設計自体にやや専門的な検討が必要なコースですが、同一労働同一賃金への対応を進めるうえでも有効な選択肢になります。
「賃金区分をどう共通化すればよいか分からない」「自社の賃金テーブルが要件を満たすか確認したい」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。助成金の要件・支給額等は、年度改定に限らず随時見直されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




