最低賃金の全国平均は過去最高の1,121円へ!「知らなかった」では済まない、放置時の恐ろしいリスクと実務対応

制度の説明

経営者の皆様にとっては非常に頭の痛いテーマ、「最低賃金の改定」です。「毎年少しずつ上がっているから、今年も10円や20円くらいだろう」と楽観視していませんか?

結論から申し上げます。
令和8年度の京都府の最低賃金改定は、過去最大の大増額です。

もし「うちは一応、時給1,000円以上は払っているから大丈夫」と確認を怠り、放置してしまった場合、将来的に従業員の退職時に一時にして数十万円のバックペイ(差額請求)を求められるという、恐ろしいリスクを背負うことになります。

今回は、最低賃金変更の概要と、地元の小さな会社ほど注意すべき「落とし穴」、そして今すぐ会社が取るべき対策を解説します。

令和8年度「京都府最低賃金」の概要と基本ルール

まずは、今回の改定内容を整理します。

  • 改定後の最低時給:1,122円(過去最高額)
  • 引き上げ額:+64円(過去最高の引上げ額)
  • 引き上げ率:6.05%(過去最高の引上げ率)
  • 対象となる人: パート、アルバイト、正社員、契約社員など、雇っているすべての労働者(試用期間中の従業員も含みます) 

「時給で働くパートさんだけ関係がある」と思われがちですが、月給制の正社員であっても「基本給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間」で計算した時給が1,122円を下回っていれば、完全に法律違反となります。
※一部に例外(特例許可など)はありますが、原則として「すべての労働者が対象」とお考えください。
※なお、特定の産業(電気機械器具製造業)の労働者には個別の特定最低賃金(1,136円)が適用されます(令和8年1月24日発効)。

全国の一覧>>>地域別最低賃金の全国一覧
過去の推移>>>京都府最低賃金の推移

実務のプロが見る「落とし穴」:4人に1人が下回る現実と、放置した将来の恐怖

今回の改定、実は数字以上に企業へのインパクトが凄まじいです。
社労士の視点から、知っておいてほしい「2つの数値」をお伝えします。

① 影響率は27.6%!「他人事」と言える企業はほぼありません

統計によると、今回の改定による影響率は27.6%に達すると試算されています
これはつまり、「京都府内で働く人の約4人に1人は、今のままだと新しい最低賃金を下回ってしまう」という状況です。

「うちの地域は地方だから、都会の相場とは違う」は通用しません。
最低賃金は都道府県一律で適用されます。地元の小規模企業や、これまで「時給1,050円〜1,100円程度」で求人を出していた企業にとっては、ほぼ確実に影響が出る、まさに「全社対応必須」の緊急事態なのです。

② 【試用計算】放置しておくと、退職時に「70万円」の請求も!?

もし「気づかなかった」「あとで直せばいいや」と未払いのまま放置してしまったらどうなるか。将来の影響度を試算してみました。

労働基準法における賃金請求権の時効は現在「3年間」です。
例えば、時給の見直しをせず、3年前の最低時給(仮に1,000円前後だったとします)のままで3年間働いていたパートタイマーがいたとしましょう。
新しい最低賃金(1,122円)との差額は1時間あたり約120円。

  • 1時間あたりの差額:約120円
  • 1日5時間、月20日勤務(月100時間):月額12,000円の未払い
     →3年間(36ヶ月)で 432,000円
  • フルタイム(月170時間弱)に近い働き方:月額約20,000円の未払い
     →3年間(36ヶ月)で 約720,000円

従業員が退職するタイミングで「過去3年分の差額、約70万円を支払ってください」と請求され、一括で支払わなければならないリスクが現実になります。退職時のトラブルや、労働基準監督署からの是正勧告によるケースは近年非常に増えています。

経営者が今すぐやるべき「3ステップのアクションプラン」

もし対応ができているのか不安の場合、会社は今すぐ動く必要があります。次の3つのステップで社内の総点検を行ってください。

  • ステップ1:全従業員の現在の「実質時給」を洗い出す
    パート・アルバイトは現在の時給を確認。正社員(月給制)は「基本給÷1ヶ月の平均所定労働時間」で時給換算の金額を計算してください。
    ただし、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外・休日・深夜手当、賞与等は除外します。
  • ステップ2:最低時給未満の従業員をリストアップする
    対象者が何人いるか、1人あたり何円の引き上げが必要かを把握し、会社全体で毎月いくらの人件費増になるかを試算します。
  • ステップ3:雇用契約書の巻き直しと給与システムの設定変更
    引き上げ対象の従業員に対し、適切な時期から新時給を適用できるよう、雇用契約書(労働条件通知書)の改定準備と、給与計算ソフトの設定変更をスケジュールに組み込みます。
    ※万が一、過去の支給分に計算漏れや未払いが見つかった場合は、このタイミングで合わせて清算を行っておくのが安全です。

まとめ:人件費アップを「会社の成長」に変えるために

今回の引き上げ幅「64円」は、企業の経営にダイレクトに響く大きな数字です。しかし、法律である以上、避けて通ることはできません。

ただ、このピンチを「優秀な人材を確保し、定着させるためのチャンス」と捉え、あわせて業務の効率化や価格転嫁、また引き上げに伴って活用できる「業務改善助成金」などの国の支援策を賢く使っていくことが、これからの時代を生き抜く経営戦略になります。

「うちの正社員の給与計算、本当に1,122円をクリアしているかな?」「これを機に助成金を使って設備投資をしたいけれど、何から始めればいい?」など、少しでも不安を感じられた地元の経営者・担当者様。

当事務所(京都府南丹市)では、地域密着の社労士として、最低賃金対応の給与シミュレーションから、就業規則の改定、各種助成金の申請までトータルでサポートしております。些細な疑問でも構いませんので、まずは下記のお問い合わせフォーム、またはお電話よりお気軽にご相談ください。