転職者を受け入れる事業所は4割に|令和7年転職者実態調査から見る「辞める理由」と会社の備え

転職者を受け入れる事業所は4割に|令和7年転職者実態調査から見る「辞める理由」と会社の備え 行政発表・統計

転職者がいる事業所は、5年前より増えて4割近くに

令和8年(2026年)9月25日、厚生労働省が「令和7年転職者実態調査」の結果を公表しました。
この調査は5年ごとに行われており、前回は令和2年(2020年)でした。

今回の調査では、転職者がいる事業所の割合は38.2%となり、前回の33.0%から5.2ポイント上がりました。

この記事では、調査の結果を「転職者を採る側」と「従業員に辞められる側」の両面から読み、地域の小さな会社にとっての意味を整理します。

調査でいう「転職者」とは

この調査でいう「転職者」は、事業所に雇用される前の1年間に、他の企業に雇用された経験がある人(移籍出向を含む)で、令和6年(2024年)10月1日から令和7年(2025年)9月30日の間に雇用された人を指します。
調査の対象は、常用労働者5人以上の事業所です。

つまり、直近1年間に「他社から移ってきた人」の調査です。
新卒で入社した人や、1年以上仕事をしていなかった人が再び働き始めた場合は、転職者には数えられません。

転職者がいる事業所は38.2%

業種によって差はあるが、全体では4割近く

区分転職者がいる事業所の割合
全体38.2%(前回33.0%)
不動産業、物品賃貸業53.9%
情報通信業49.0%
医療、福祉48.8%

転職者がいる事業所の割合が38.2%と、5年前と比較して5.2ポイント上昇しました。
少しずつ、転職市場そのものが拡大しているようです。

一方、一般労働者に占める転職者の割合は6.4%で、前回の7.2%から下がっています。
転職者を受け入れる事業所は増えているのに、割合は下がっているように見えます。

これには、働く人全体の数が増えていることが影響していると考えられます。
健保組合も協会けんぽも黒字にのコラムで触れたとおり、高齢者や女性を中心に働く人は増えています。
新たに働き始めた人は転職者に数えられないため、全体の数が増えると、転職者の割合は下がって見えます。

小さな会社でも、転職者の割合は大企業と変わらない

区分転職者がいる事業所の割合
全体38.2%(前回33.0%)
1,000人以上94.6%
300〜999人86.1%
100〜299人77.7%
30〜99人60.3%
5〜29人32.7%

事業所の規模別に見ると、転職者がいる事業所の割合は、1,000人以上で94.6%、5〜29人で32.7%と大きな差があります。

ところが、一般労働者に占める転職者の割合で見ると、1,000人以上が5.0%、5〜29人が6.3%と、規模による差はほとんどありません。
従業員が多い事業所ほど、誰か1人は転職者が入るということで、規模の差が「転職者がいる事業所の割合」の差になっていると考えられます。

小さな会社でも、従業員に占める転職者の割合は大企業と変わらない、ということです。

会社はなぜ転職者を採用するのか

転職者を採用した理由(3つまで回答)は、職種によって次のような傾向があります。

  1. 専門・技術職や管理職:「経験を活かし即戦力になるから」が最も多い(専門・技術職64.1%、管理職60.7%)
  2. サービス職や生産工程等の職種:「離職者の補充のため」が最も多い(サービス職60.8%、生産工程等59.4%)

また、今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所は63.6%で、前回の53.3%から増えています。
5〜29人の事業所でも61.2%です。
採用予定がある事業所のうち、40.0%が「転職者を優先する」と答え、「新規学卒者を優先する」は9.8%にとどまりました。

小さな会社にとって、転職者の採用はもはや特別なことではなくなっています。
一方で、「辞めた人の穴を埋める」ための採用も多くあります。
辞める人を減らすことができれば、採用の負担も軽くなります。

辞める理由の上位は「賃金」「会社の将来」「仕事内容」

転職者が前の会社を自己都合で辞めた理由の上位は、次のとおりです。

離職理由令和7年前回(令和2年)
賃金が低かったから25.5%23.8%
会社の将来に不安を感じたから25.2%23.3%
満足のいく仕事内容でなかったから24.7%26.0%

「賃金」と「会社の将来」を挙げる人が増え、「仕事内容」は減っています。
年齢別に見ると、35〜44歳では「会社の将来に不安を感じたから」が32〜34%と特に高くなっています。

上位の3つは、いずれも事業主の取り組みで改善の余地がある項目です。

私自身も、転職を考えたときに大きかったのは、仕事内容より「賃金」と「会社の将来」への不安でした。
規模の大きな会社を志向して転職しましたが、大きな会社は大きな会社で、さらに大きな会社と競争していました。
かえって将来への不安が大きくなったのも事実です。

働く人の安心につながるのは、会社の規模そのものよりも、会社が将来をどう考え、それをどう伝えているかなのかもしれません。

なお、転職した後の職場の満足度でも、最も低いのは「賃金」でした(満足度D.I.=「満足」の割合から「不満」の割合を引いた値で、22.2ポイント)。

転職活動の方法

転職者が使った転職活動の方法(複数回答)は、次のとおりです。

  1. 求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等:45.1%
  2. ハローワーク等の公的機関:29.6%
  3. 縁故(知人、友人等):22.2%

調査には地域別の集計はありませんが、過去の経験から、都市部では求人サイト、地方ではハローワークや知人の紹介の比重が大きいと感じます。
小さな会社にとっては、ハローワークの求人票の書き方や、従業員からの紹介が、採用の大事な入口になります。

転職した人の「その後」

転職した人に今後の希望を聞いた結果は、次のとおりです。

  1. 今の職場で今後も働きたい:55.1%(前回52.7%)
  2. 機会があれば転職したい:20.6%
  3. 分からない:22.9%

年齢別では、40〜44歳で「今の職場で今後も働きたい」が43.1%と最も低く、「機会があれば転職したい」が27.9%と高くなっています。

私が以前勤めていた会社で新しく立ち上げた事業でも、転職者が多く、再び転職していく人が少なくありませんでした。
この調査は転職者だけが対象なので比較はできませんが、一度転職を経験すると、次の転職への心理的なハードルは下がるのかもしれません。

国は「円滑な労働移動」を後押し

雇用保険の制度も、転職しやすい方向に見直されています。

令和7年4月から、正当な理由のない自己都合で退職した場合の基本手当(失業手当)の給付制限期間が、原則2か月から1か月に短縮されました(5年間に2回以上の場合は3か月)。
また、離職前後に教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除されるようになりました。

転職の良し悪しは別として、国の制度は、働く人が会社を移ることを前提とした方向に動いています。
人生100年時代、転職するかどうかにかかわらず、会社もこうした流れを前提に仕組みを考えておく必要があります。

小さな会社が備えておきたいこと

  1. 辞める理由の上位に手を打つ 賃金の決め方を、従業員に説明できるようにしておきましょう。賃金の基準づくりについては賃金テーブルの作り方で解説しています。あわせて、会社の方針や将来の見通しを、言葉にして従業員に伝えることも大切です。
  2. 中途で入った人を育てる仕組みをつくる 転職者がいる事業所のうち、82.6%が転職者に教育訓練を行っています(前回74.5%)。5〜29人の事業所でも79.8%です。内容は、計画的なOJT(79.8%)、入社時のオリエンテーション(53.9%)が中心です。小さな会社でも、入社後の数か月で何をどう教えるかを決めておくと、定着につながります。
  3. 中途採用の賃金の基準を持つ 前の職場での経験を、賃金にどう反映させるかの基準があると、採用のたびに悩まずに済み、既存の従業員との公平性も保ちやすくなります。
  4. ルールを書面にしておく 労働条件の明示や就業規則など、働くルールを書面で示しておくことは、転職してきた人の安心につながります。従業員が10人未満の会社については、従業員10人未満でも就業規則は作るべき?で解説しています。

まとめ

転職者を受け入れる事業所は4割近くに増え、今後3年間に転職者を採用する予定の事業所は6割を超えています。
小さな会社にとっても、転職者の採用は身近なものになっています。

採る側としては、中途で入った人を育てる仕組みを。
辞められる側としては、離職理由の上位である「賃金」「会社の将来」「仕事内容」への手当てを。
両方の視点から、働く人が移ることを前提にした会社づくりを考えてみてはいかがでしょうか。

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本記事は執筆時点(令和8年10月)の公表資料に基づく情報です。制度の詳細は今後の法改正等により変更される可能性があります。