「非正規社員にも賞与を出したいが、制度化する踏ん切りがつかない」
そうした処遇改善の後押しをするのが、キャリアアップ助成金の「賞与・退職金制度導入コース」です。
有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を新たに設け、実際に支給または積立てを実施した事業主に対して、1事業所あたり40万円(同時導入の場合は56万8,000円)が支給されます。
本コラムでは、令和8年度時点の情報として、支給額・対象労働者・対象事業主の要件を整理してご紹介します。
※キャリアアップ助成金には全6コースがあります。各コースの比較はキャリアアップ助成金の全コース一覧をご覧ください。
賞与・退職金制度導入コースとは
就業規則または労働協約の定めるところにより、雇用するすべての有期雇用労働者等に関して、賞与または退職金制度を新たに設け、実際に支給または積立てを実施した場合に助成する制度です。
賞与のみ、退職金のみの導入でも対象になりますが、両方を同時に導入した場合は加算があり、支給額が上がります。
賞与とは:一般的に労働者の勤務成績に応じて定期または臨時に支給される手当(いわゆるボーナス)をいいます。
退職金とは:事業所を退職する労働者に対して、在職年数等に応じて支給される退職金(年金払いによるものを含む)を積み立てるための制度であって、積立金や掛金等(以下「積立金等」という)の費用を全額事業主が負担することが就業規則または労働協約に規定されており、実際に積立金等の費用を全額事業主が負担するもの(事業主が拠出する掛金に上乗せして従業員が掛金を拠出する場合を含む)をいいます。
なお、本コースの退職金制度を適用するには、
積立て・拠出費用を事業主が全額負担することが就業規則等に規定されている制度に限られます。
従業員が自ら掛金を拠出する制度や、確定拠出年金などで従業員負担がある制度は、原則として本コースの対象にはなりません。
※退職金の定義と助成金の適用のルールが異なる点には注意ください
対象事業主の要件
【まず確認】今の状態で自己診断できるもの
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 過去に「旧諸手当制度共通化コース」または「旧諸手当制度等共通化コース」の支給を受けていないこと(受けたことがある場合は、原則として本コースの対象外です。ただし、健康診断制度を新たに設け実施した場合の助成のみを受けている場合を除きます)
- 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができること
【事前準備】取組の実施前に整えるもの
- 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いていること
- 対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出していること(賞与・退職金制度を新設する前日まで)
- 就業規則または労働協約の定めるところにより、雇用するすべての有期雇用労働者等に関して、賞与もしくは退職金制度またはその両方を新たに設けること(退職金制度は、積立て・拠出費用を事業主が全額負担することを規定したものに限る)
【取組の実施】
- 対象労働者1人につき、賞与は6か月分相当として5万円以上を支給、または退職金は1か月分相当として3,000円以上を6か月分(もしくは6か月分相当として1万8,000円以上)を積み立てたこと
- 上記の制度を、すべての有期雇用労働者等に適用させたこと
【申請前】取組後、申請までに確認すること
- 上記の制度を、初回の賞与の支給または退職金の積立て後6か月以上運用していること
- 制度の適用を受けるすべての有期雇用労働者等について、適用前と比べて基本給および定額で支給されている諸手当を減額していないこと
- (退職金制度の場合)支給決定後に積立金等が確認できる書類を提出することに同意していること
- キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んでいること(支給申請時点で、このコースに定めるすべての支給要件を満たしていること)
対象労働者の要件
- 賞与もしくは退職金制度またはその両方を新たに設けた日(制度施行日。以下「新設日」)の前日から起算して3か月以上前の日から、新設日以降6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であること
- 賞与もしくは退職金制度またはその両方を新たに設け、初回の賞与支給または退職金の積立てをした日以降の6か月間、当該事業所において雇用保険被保険者であること
- 制度を新たに設け適用した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族でないこと
- 支給申請日において離職していないこと
支給額
| 制度 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 賞与または退職金制度のいずれかを導入 | 40万円 | 30万円 |
| 賞与および退職金制度を同時に導入 | 56万8,000円 | 42万6,000円 |
1事業所あたり1回のみの支給です。
「中小企業」の具体的な資本金・従業員数の基準は助成金でよく出てくる「中小企業事業主」とは?をご確認ください。
導入にあたっての注意点
- 既に一部の有期雇用労働者等に賞与を支給していた(就業規則上も制度の規定があった)場合、対象範囲をすべての有期雇用労働者等に広げるよう就業規則を変更しても、「制度を新たに設けた」とはみなされず、支給対象外となります
- 一方、就業規則等に規定がなく、慣例的に支給していた賞与を、あらためて就業規則等に規定した場合は、支給対象となり得ます(退職金制度も同様です)
- 定年の適用を受けない有期雇用労働者については、原則として年齢にかかわらず退職金制度を適用している必要があります(ごく短期間の雇用契約である場合を除く)。定年の適用を受ける無期雇用労働者については、当該雇用区分における定年年齢までの適用で足ります
申請の流れ・申請期限
- 【事前準備】キャリアアップ計画の作成・提出(制度新設の前日まで)
- 【取組の実施】賞与・退職金制度を新設し、初回の支給または積立てを実施
- 【申請】初回の支給または積立て後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請
申請先は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局です。
よくある質問
Q. 同時に導入する場合、賞与の支給日と退職金の積立て日は異なっても問題ありませんか?
問題ありません。初回の支給または積立てのいずれか遅い日から6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内が支給申請期間になります。
Q. すでに一部の非正規社員に賞与を払っている場合、対象を広げれば申請できますか?
できません。就業規則上ですでに賞与制度が規定されている場合、対象範囲を広げただけでは「制度を新たに設けた」とは認められず、支給対象外となります。
制度自体が就業規則等に規定されていなかった場合に限り、新設として認められます。
Q. 退職金制度は、確定拠出年金のように従業員が一部負担する制度でも対象になりますか?
原則として対象になりません。本コースの退職金制度は、積立て・拠出費用を事業主が全額負担することが就業規則等に規定されている必要があります。
まとめ:非正規社員への賞与・退職金制度をこの機会に
賞与・退職金制度導入コースは、これまで賞与や退職金の対象外だった非正規社員に対して、新たに制度を設けることで1事業所あたり最大56万8,000円が支給される制度です。慣例的な支給を正式な制度として規定し直すだけでも対象になり得るため、比較的取り組みやすいコースの一つです。
「うちの会社の場合、制度の新設として認められるか確認したい」「退職金制度の設計方法が分からない」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。助成金の要件・支給額等は、年度改定に限らず随時見直されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




