「親の介護が始まったら、仕事を辞めるしかないのでは」
そう考えて退職してしまう従業員を一人でも減らすために作られたのが、両立支援等助成金の「介護離職防止支援コース」です。
介護休業の取得や介護両立支援制度の利用を後押しする体制を整えた中小企業事業主を支援します。
令和8年度から、有給の介護休暇制度を新たに導入した場合に支給される「介護休暇制度有給化支援」が新設され、本コースは次の4つのパターンで構成されています。
本コラムでは、令和8年度時点の情報として、4つの支給パターンと支給額、申請の流れを整理してご紹介します。
※両立支援等助成金には全6コースがあります。各コースの比較は両立支援等助成金の全コース一覧をご覧ください。
介護離職防止支援コースとは
介護休業取得者や介護のための短時間勤務制度利用者の業務を代替する体制整備を行った事業主を支援する制度です。次の4つのパターンで支給されます。
- 介護休業:仕事と介護の両立支援プランを作成し、プランに基づき介護休業を取得・職場復帰させた場合
- 介護両立支援制度:仕事と介護の両立支援プランを作成し、プランに基づき介護のための短時間勤務制度などを利用させた場合
- 業務代替支援:介護休業取得者・短時間勤務制度利用者について、代替要員の新規雇用または業務代替者への手当支給等を行った場合
- 介護休暇制度有給化支援:有給の介護休暇制度を導入し、利用させた場合(令和8年度新設)
仕事と介護の両立支援プラン(以後、「両立支援プラン」と記載)とは:労働者の介護休業取得・職場復帰を円滑にするため、労働者ごとに事業主が作成する実施計画。介護休業取得者の業務の整理や引き継ぎの実施方法などを盛り込む。
支給対象となるのは中小企業事業主のみです。中小企業の具体的な基準は助成金でよく出てくる「中小企業事業主」とは?をご確認ください。
介護休業の要件
対象事業主の要件
- 両立支援プランにより、労働者の介護休業取得・職場復帰を支援するという方針を周知していること
- 対象労働者と面談等を行い、「両立支援プラン(面談シート兼用)」に記録し、プランを作成すること
- 両立支援プランに基づき、業務の整理・引き継ぎを実施していること
- 介護休業制度及び所定労働時間の短縮等の措置を労働協約または就業規則に定めていること
- 職場復帰後に介護休業取得者とフォロー面談を行い記録すること
- 介護休業取得者を原職等に復帰させる旨を労働協約または就業規則に規定していること
対象労働者の要件
- 対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得したこと
- 介護休業終了後、原則として原職等に復帰させ、3か月以上継続して雇用していること
- 介護休業の開始日から支給申請日までの期間、雇用保険被保険者として継続して雇用していること(復帰後3か月間は5割以上就業している必要があります)
介護両立支援制度の要件
対象事業主の要件
- 両立支援プランにより、労働者の仕事と介護の両立を支援するという方針を周知していること
- 対象労働者と面談等を行い、「両立支援プラン(面談シート兼用)」に記録し、プランを作成すること
- 介護両立支援制度を労働協約または就業規則に定めていること
対象となる介護両立支援制度は次の5種類です。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 時差出勤制度 | 始業・終業時刻を1時間以上繰り上げ・繰り下げ |
| 短時間勤務制度 | 1日の所定労働時間を1時間以上短縮 |
| 在宅勤務制度 | 介護のためICT等を活用して在宅勤務 |
| フレックスタイム制度 | 介護のためフレックスタイムを利用 |
| 介護サービス費用補助制度 | 介護サービス費用の全部または一部を事業主が補助 |
時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度、フレックスタイム制度は各制度につき、制度利用実績が所定労働日を前提として合計20日間以上など複数の要件があります。
介護サービス費用補助制度は制度利用開始から6か月以内に負担額の5割相当額以上または10万円以上を補助したことが要件となります。
対象労働者の要件
- 対象労働者がいずれかの介護両立支援制度を利用したこと
- 制度利用終了後、1か月以上継続して雇用していること
- 制度利用開始日から支給申請日までの期間、雇用保険被保険者として雇用していること
同一労働者について同一の制度に係る申請は1回限りですが、同一対象家族について異なる複数の制度を利用した場合は合計2回まで支給されます。
業務代替支援の要件
業務代替支援には①新規雇用、②手当支給等:介護休業/短時間勤務の2パターンに分けて紹介します。
新規雇用
対象事業主の要件
- 対象労働者(介護休業取得者)の代替要員を、新たな雇い入れまたは新たな派遣受入れにより確保したこと
- 介護休業制度及び所定労働時間の短縮等の措置を労働協約または就業規則に定めていること
対象労働者の要件
- 対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得したこと
- 介護休業開始日から支給申請日まで雇用保険被保険者として継続して雇用していること
代替要員の要件
介護休業や介護両立支援制度と異なり、代替要員についても要件があります。
- 代替要員が、対象労働者の業務を実際に代替していること
※同一事業所・部署で勤務していることが原則です
※対象労働者が有資格者で、資格がなければ遂行できない業務を担当していた場合は、代替要員も同じ資格を持っている必要があります - 代替要員の所定労働時間が、対象労働者(介護休業取得者)の所定労働時間の2分の1以上であること(複数名の代替要員で合算することも可能)
- 対象労働者の介護休業期間のうち、代替要員が勤務した期間が8割以上であること
- 代替要員としての雇用契約または派遣契約の開始時期が、事業主が対象家族の要介護の事実を知った日、または介護休業開始日の6か月前までのいずれか遅い日以降であること
このほか、いわゆる「玉突き」配置(同僚が介護休業取得者の業務を代替し、その同僚の元の業務を新規雇用者が代替する形)は支給対象です。
なお、対象労働者に業務に係る手当が支払われていた場合は、代替要員にも同様の手当を支払う必要があります(雇用形態の違いを理由に支払わないことは認められません)。
手当支給等:介護休業/短時間勤務
対象事業主の要件
- 対象労働者の業務を、事業主が雇用する労働者(業務代替者)に代替させていること
- 業務の見直し・効率化のための取組(業務の一部休止・廃止、手順の見直し、マニュアル作成による標準化等)を業務代替期間開始日の前日までに実施していること
- 代替業務に対応した賃金制度を労働協約または就業規則に定め、その制度に基づき業務代替者の賃金を実際に増額していること
┗介護休業の場合:500円/日、または1万円/月のいずれか低い方の額以上
┗短時間勤務の場合:150円/日、または3千円/月のいずれか低い方の額以上 - 介護休業制度及び所定労働時間の短縮等の措置を労働協約または就業規則に定めていること
対象労働者の要件
- 介護休業の場合:連続5日以上の介護休業を取得したこと
- 短時間勤務の場合:合計15日以上の介護のための短時間勤務制度を利用したこと
- 休業(利用)開始日から支給申請日まで雇用保険被保険者として継続して雇用していること
介護休暇制度有給化支援の要件
- 令和8年4月8日以降に、有給の介護休暇制度を導入し、労働協約または就業規則に規定していること(時間単位かつ中抜け可能、1日の所定労働時間を変更せず利用可能、年次有給休暇とは別途取得できるもの)
- 上記の制度を10時間以上利用した雇用保険被保険者が在籍していること
- 介護休業制度及び所定労働時間の短縮等の措置を労働協約または就業規則に定めていること
支給額
| パターン | 支給額 | 支給人数/回数 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 40万円(60万円) ※括弧内は連続15日以上休業の場合 | 1事業主5人まで |
| 介護両立支援制度 | 制度を1つ導入・利用:20万円(30万円) 制度を2つ以上導入・利用:25万円(40万円) ※括弧内は合計60日以上利用の場合 | 1事業主5人まで |
| 業務代替支援 | 新規雇用:20万円(30万円) 手当支給等・介護休業:5万円(10万円) 手当支給等・短時間勤務:3万円 ※括弧内は連続15日以上休業の場合 | (合算して) 1事業主5人まで |
| 介護休暇制度有給化支援 | 30万円(50万円) ※括弧内は10日以上の有給休暇を付与の場合 | 1事業主1回限り |
このほかに以下の加算があります
・「環境整備加算」(10万円、1事業主1回限り)
・対象労働者が有期雇用労働者の場合の「有期雇用労働者加算」(10万円、1事業主1回限り)
環境整備加算は①介護休業・介護両立支援制度に係る研修の実施、②相談体制の整備、③取得・利用事例の収集・提供、④制度や取得促進方針の周知、の4つすべてを実施した場合に支給され、介護休業、介護両立支援制度、業務代替支援に加算が可能です
有期雇用労働者加算は介護休業、介護両立支援制度に加算が可能です
業務代替支援について、新規雇用と手当支給等(介護休業)は対象労働者1人につきいずれか一方の支給です。ただし、手当支給等(介護休業)または新規雇用と手当支給等(短時間勤務)は、対象労働者1人につきそれぞれ1回ずつ支給が可能です。
申請の流れ・申請期限
- 介護休業:介護休業終了日の翌日から起算して3か月が経過する日の翌日から2か月以内
- 介護両立支援制度:制度利用実績が合計20日または60日(介護サービス費用補助制度は6か月)を経過する日の翌日を起算日とし、そこから1か月経過する日の翌日から2か月以内
- 業務代替支援:介護休業終了日または短時間勤務制度終了日の翌日から2か月以内
- 介護休暇制度有給化支援:制度利用時間数が10時間に達した日の翌日から起算して2か月以内
申請先は、いずれも申請事業主の本社等(人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所)の所在地を管轄する労働局雇用環境・均等部(室)です。
令和8年度の改正点
令和8年4月8日付の改正により、主に以下の変更が行われています。
- 介護両立支援制度のメニューから「所定外労働の制限制度」「深夜業の制限制度」を削除
- 介護休暇制度の有給化を独立した助成金(介護休暇制度有給化支援)とし、1回限り30万円(10日以上の有給休暇付与の場合50万円)を新設
- 有期雇用労働者加算(10万円)を新設
よくある質問
Q. 介護両立支援制度は複数導入したほうが有利ですか?
制度を2つ以上導入し、対象労働者が利用した場合は支給額が上がります(20万円→25万円、30万円→40万円)。ただし、導入する制度が実際に自社の業務内容や働き方に合っているかを優先して検討することをおすすめします。
Q. 介護休暇制度有給化支援は、他のパターンと併用できますか?
介護休暇制度有給化支援は1事業主1回限りの支給ですが、他のパターンとは別枠の制度のため、要件を満たせば他のパターンと合わせて申請可能です。
まとめ:介護離職を防ぐ体制づくりを支援する制度
介護離職防止支援コースは、介護休業の取得支援から介護両立支援制度の利用、業務代替体制の整備、介護休暇の有給化まで、幅広い取り組みを支援する制度です。令和8年度に新設された介護休暇制度有給化支援は、比較的取り組みやすい制度整備から始めたい事業主にとって選択肢の一つになります。
「うちの会社はどのパターンから始めればよいか」「仕事と介護の両立支援プランの作り方が分からない」といったご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本記事は執筆時点(令和8年度)の公表資料に基づく情報です。助成金の要件・支給額等は、年度改定に限らず随時見直されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。




